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A role for the aryl hydrocarbon receptor and the dioxin TCDD* in rheumatoid arthritis.

Rheumatology (Oxford).
2008 Sep;47(9):1317-22. Epub 2008 Jul 10.

環境因子は関節リウマチの発病に関わり、喫煙が関節リウマチの環境危険因子であることが示唆されている。TCDDは煙草の主要な毒性因子の一つである。関節リウマチでの喫煙の生物学的影響を明確にするため関節リウマチの発病におけるTCDDの役割を調べた。

関節リウマチと変形性関節炎滑膜組織のAhR**発現、TCDD刺激による関節リウマチ滑膜組織でのサイトカイン発現、AhR拮抗剤を使用したAhRの機能研究、NF-κB、ERKの抑制剤を使用し、どのシグナル伝達経路がTCDD-AhR相互作用により刺激されるか評価を行った。

AhR mRNAと蛋白は関節リウマチ滑膜組織中にて変形性関節炎組織中と比較し高値であった。TCDDはAhRと結合することでIL-1β、IL-6、IL-8をup regulateし、この作用はNF-κBやERKのsignaling cascadeを介して伝えられていた。滑膜細胞のAhR発現はTNF-αによってup-regulateされていた。

TNF-αは関節リウマチ滑膜組織でAhR発現を活性化し、煙草の喫煙やTCDDへの暴露は関節リウマチの炎症反応を増強させる。TCDDはAhRと結合することで炎症サイトカインを誘導し、NF-κBやERKのsignaling cascadeを刺激する。したがって喫煙のようなTCDDへの暴露は関節リウマチの病理病態を悪化させる。

2008年11月28日 吉岡 寿麻子

略語:

  • * TCDD: 2,3,7,8-tetrachrolodibenzo-p-dioxin 、 ** AhR: aryl hydrocarbon receptor

Key words:

  • NF-κB: nuclear factor-κB:細胞内に存在する転写因子の一つ。種々の刺激により核内に移行し,炎症性サイトカインなどの転写を活性化する。
  • ERK:extracellular signal-regulated kinase:MAPキナーゼファミリーに属する細胞内シグナル伝達分子の一つ。種々の刺激により活性化され、下流にシグナルを伝達する。
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