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Radical containing combustion derived particulate matter enhance pulmonary Th17 inflammation via aryl hydrocarbon receptor

Jaligama S, et al. Part Fibre Toxicol. 2018 May 3; 15: 20.

背景
EPFRs(環境的に耐性のフリーラジカル)は、有害廃棄物の熱処理やディーゼルおよびガソリンの燃焼、木や煙草の煙など様々な物質が燃焼する際に生成される。また、Th17 細胞やIL-17Aは喘息・COPDといった気道系疾患の病態生理において重要な役割を果たしており、IL-17Aなどのサイトカインは好中球を気道に遊走させる。好中球による炎症反応やTh17細胞による免疫応答は重症喘息の大きな特徴であり、またステロイド抵抗性喘息の発症にも関係している。

これまでEPFRsの曝露により樹状細胞の成熟とTh17細胞による肺組織での免疫応答が惹起されることが分かっている。さらに、喘息モデルマウスにおいてはこれらの反応が増強され、EPFRsへの曝露は喘息の病態形成にかかわるとともに増悪のリスク因子であると考えられている。Aryl hydrocarbon receptor (以下AhR)はTh17 細胞の分化において重要な役割を果たす。この研究では、EPFRsへの曝露が、AhR経路依存性にTh17細胞の極性化に繋がるかどうかを検討した。


結果
EPFRsへの曝露によりTh17細胞とIL-17Aによる肺組織への免疫応答が惹起され、気道系への好中球遊走が増強した。さらに、IL-1β、IL-6、IL-17A、IL-17E、IL-21、IL-22、IL-31、IL-33、KC、MCP-1といった10種類のサイトカインの増加がみられた。

こうした炎症反応におけるAhR経路の役割を明らかにするため、A549ヒト肺上皮細胞とマウス骨髄由来樹状細胞にEPFRsを曝露したところ、AhR活性化のマーカーであるCyp1a1とCyp1b1の発現が増強した。一方でA549細胞にAhRアンタゴニストやantioxidantを添加するとEPFRsによるこれらの遺伝子の発現が抑制された。また、マウスにEPFRsを曝露させると、肺組織において Cyp1alCyp1bl 遺伝子発現が増加することが確認された。

EPFRs曝露マウスにAhRアンタゴニストを投与すると、肺におけるTh17細胞の割合がアンタゴニスト非投与群と比較して著明に減少した。さらにAhRアンタゴニスト投与後にEPFRsに曝露させたマウスの気管支肺胞洗浄液中の炎症細胞を測定すると、アンタゴニスト非投与群と比較して好中球とリンパ球の増加がみられなかった。以上より、Th17細胞による免疫応答や肺への好中球遊走反応はAhR経路依存性であることが示された。


結論
EPFRsの曝露によりAHR活性化とCyp1al・Cyp1b1遺伝子の発現がみられ、AhRが肺において好中球性炎症を含むTh17細胞の免疫応答に関与することが分かった。



木村 七絵 2018/7/26


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