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What Is Oxidative Stress?

Yoshikawa T and Naito Y. J Japan Medical Association 45(7): 271-276, 2002.

要旨
 酸化ストレスは、動脈硬化症、高血圧症、糖尿病、虚血性疾患、悪性腫瘍などの生活習慣病に関与しています。活性酸素はタンパク質やDNAなどの生体分子を標的とし、有害と考えられています。しかしながら、酸化ストレスは一方で生理学的作用および細胞内シグナル伝達において重要な役割も果たしています。

 そのため、酸化ストレスとは「酸化と抗酸化のバランスにおける均衡が壊れた状態」とも考えられます。in vivo で酸化ストレスを評価できるバイオマーカーとして、lipid hydroperoxides、4-hydroxynonenal、isoprostan、8-hydroxyguanine、そしてubiquinol-10などが代表的であり、これらの測定は、生活習慣病における病態や治療評価に有用と考えられます。なぜなら、喫煙、飲酒、食事などの日々の習慣はそれぞれが酸化ストレスと密接に関連しているからです。例えば、本邦における食生活習慣はこの数十年で大きく変化し、主要栄養素に占めるエネルギー摂取量では脂質の割合が25%超えているなど、問題は深刻です。

 しかしながら、生活習慣病は日々の生活習慣だけではなく、遺伝や環境因子も含めた多因子疾患であり、原因を断定的に特定するのは困難です。多くの環境要因もまた活性酸素を生成する可能性をはらんでおり、そのような酸素ラジカルによって引き起こされるDNA損傷が多くの疾病に関連している可能性が考えられます。個々の遺伝的背景因子も当然ながら考慮に入れなければなりません。

 これらのことから、生活習慣病の発症予防においては、環境因子や遺伝因子も考慮に入れながら、適切なバイオマーカーによって酸化リスクを評価し、健康的な生活を送る方法について取り組みを行う必要があります。

アセスメント
 ダイオキシン類もまた酸化ストレスの原因物質です。急性期の影響のみならず、カネミ油症の患者さんにおいては急性期の影響のみならず、長期的な影響として悪性腫瘍の発症リスクが有意に高く、神経痛、頭痛、認知症、多汗症、不眠、鼻血が止まりにくい、心肥大、動悸、動脈硬化、糖尿病、十二指腸潰瘍、高脂血症、骨粗鬆症、紫斑、手足のしびれなどが、一般対照群よりも多く認められる傾向が報告されています(Sci Total Environ 409: 2361-2365, 2011)。これらの疾患はほとんどが生活習慣病との関連が指摘されており、酸化ストレスの影響を考える必要があります。すなわち、ダイオキシン類の長期の影響を考えていくうえで、酸化ストレスとその評価法は極めて重要なことと考えられます。



小屋松 淳 2018/12/31


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