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Langerhans Cell Maturation and Contact Hypersensitivity Are Impaired in Aryl Hydrocarbon Receptor-Null Mice

The Journal of Immunology, 2009, 182: 6709–17.

【要旨】
表皮ランゲルハンス細胞におけるダイオキシン類の受容体であるaryl hydrocarbon receptor (AhR)の機能が検討された。C57BL/6マウスとC57BL/6バックグラウンドのAhRノックアウトマウスとの比較が行われた。ランゲルハンス細胞は耳介表皮から調整したケラチノサイトを含む細胞浮遊液からセルソーターを用いて単離された。

正常マウスから単離したランゲルハンス細胞はAhRを恒常的に発現していた。興味深いことに腹腔内にダイオキシン(TCDD; 10μg/kg)を投与してもランゲルハンス細胞にはCYP1A1などの酵素は誘導されなかった。一方ケラチノサイトには同様の処理によってこれらの酵素が誘導された。 AhRの抑制分子であるAhR repressor (AHRR)をランゲルハンス細胞は強く発現し,TCDD処理により発現はさらに増強した。

AhRノックアウトマウスではAhRRの発現は正常マウスに較べ低かった。
またindoleamine-pyrrole 2,3-dioxygenase (IDO)の発現がノックアウトマウスでは極めて低く,そのためトリプトファンの代謝活性も正常マウスに較べ低かった。ランゲルハンス細胞は表皮細胞浮遊液をin vitroで培養することで活性化するが,ノックアウトマウスではランゲルハンス細胞の活性化マーカーの一部(CD24, CD80)の発現が正常マウスに較べ低かった。

これはノックアウトマウスのケラチノサイトからのGM-CSF産生が低下していたためと考えられた。またFITCによる接触性皮膚炎モデルにおいても,ノックアウトマウスでは正常マウスに較べ耳介腫脹が軽度であった。 以上,皮膚における免疫応答にAhRが関与していることが示された。また定常状態においてランゲルハンス細胞は,表皮におけるトリプトファンレベルを低く保ち,AhRのリガンドであるトリプトファンの紫外線代謝物FICZ(6-formylindolo[3.2-b]carbazole)の生成を抑制している可能性があると考えられた。


抄訳 内 博史(2009/10/31)

Key words:

  • ランゲルハンス細胞:表皮に存在する抗原提示細胞
  • indoleamine-pyrrole 2,3-dioxygenase:トリプトファン分解に関わる酵素。またT細胞の増殖を抑制する。
  • GM-CSF (granulocyte macrophage colony-stimulating factor):細胞増殖因子の一つ。表皮ではケラチノサイトが産生し,ランゲルハンス細胞の生存,活性化を調節する。


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