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TCDD and a putative endogenous AhR ligand, ITE, elicit the same immediate
change in gene expression in mouse lung fibroblasts

Toxicol Sci. 2009 Nov 19. [Epub ahead of print]

【要旨】
リガンド依存性転写因子である芳香族炭化水素受容体 (英:Aryl Hydrocarbon Receptor、AhR)は、生体異物の幾つかの種類の毒性に介在し、内因性リガンドはまだ同定されてないが、AhRが分化、再生と免疫における重要な生理学的な役割を持つとされている。その一つの候補である内因性リガンド、2-(1’H-インドロ-3’-カルボニル)-チアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(ITE)は、in vitroにおいてAhRアゴニストの可能性を有し、in vivoではマウスのAhRを活性化するものの、毒性は誘導しない。
そこで、著者らは、ITEや毒性リガンドであるTCDDは、それぞれ違った毒性をもたらす全く別の遺伝子の転写を調整するかもしれないとの仮説を立てた。この仮説を検証するために、初代マウス線維芽細胞をITE(0.5µM)、TCDD(0.2nM)、DMSOを4時間暴露し、遺伝子発現についてマイクロアレイを用いて評価した。この短期間・低用量による処理のあと数百の遺伝子が有意に変化していて、ITEとTCDDに対する反応は定性的及び定量的いずれにおいても、酷似していた。
誘導された遺伝子の組み合わせの中には、一連の予想されたAhR依存性生体異物代謝酵素及び肺線維芽細胞の炎症性役割に反映する幾つかの組み合わせがある。幾つかの選択された遺伝子のRT-PCRアッセイは、これらのマイクロアレイのデータを裏付けるものであり、さらにはリガンド間の発現における動的違いがあるかもしれないことも示唆するものであった。つまり、これらはITEとTCDDは、初期の転写反応が同様であるようなAhR構造における類似の変化を誘導していることを示している。
さらには、TCDDとITE間の毒性の違いが遺伝子発現の違いによるものであれば、その時は持続的なTCDDによる二次的変化(短期の作用であるITEではなく)がどうも責任を有するものであろう。


石松祐二 2010/1/12

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