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Loss of dioxin-receptor expression accelerates wound healing in vivo by a mechanism involving TGF

Journal of Cell Science 122; 1823-33, 2009

【要旨】
ダイオキシン類に暴露すると、様々な皮膚炎や塩素性ざ瘡の形成が惹起される。
ダイオキシン受容体であるaryl hydrocarbon receptor (AhR)シグナルは免疫反応のみならず、様々な細胞の増殖、分化にも影響を及ぼすと考えられている。この報告では、AhRシグナルが皮膚の創傷治癒機転に及ぼす影響を調べた。AhR遺伝子欠損マウスを用いて、創傷治癒に影響を及ぼすサイトカインのうちTGFβに着目して検討した。AhR遺伝子欠損マウスでは、炎症反応に変化なく、表皮細胞の再上皮化が速やかに起こり、皮膚潰瘍が治癒した。表皮細胞の増殖に変化はなく、表皮細胞の遊走は亢進しており、線維芽細胞の増数と膠原線維の増生も確認された。真皮の線維芽細胞から活性型TGFβの産生が亢進しており、TGFβは表皮細胞に作用してその遊走を亢進していると考えられた。また、正常マウスにAhRシグナルに拮抗するオリゴヌクレオチドを投与すると、AhR遺伝子欠損マウスと同様に再上皮化の促進による皮膚潰瘍の治癒促進が見られ、表皮細胞のTGFβシグナルの活性化も確認された。AhRシグナルを減弱することは、潰瘍治療の方法となりうると考えられた。

三苫千景 2010/03/04

Key words:

  • TGFβ        線維化に影響を及ぼすサイトカインの一種。
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