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The effects of an in utero exposure to 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin on male reproductive function: identification of Ccl5 as a potential marker

Int J Androl 2010; 33; 413-24.

【要旨】
 筆者らは妊娠したラットにTCDDを経口投与し,生まれたF1世代の雄ラットの精巣への影響を検討した。胎生15日に妊娠ラットに10, 100, 200ng/kgのTCDDが投与された。この量のTCDDは母獣,胎児に急性毒性は現れなかったが,270ng/kgでは死産するラットがみられた。F1世代の精巣では組織学的に変化は認めず,また精巣内テストステロンレベルにも影響は見られなかった。精巣上体における精子貯蔵は母獣に200ng/kgのTCDDが投与された群で一過性に減少がみられた。マイクロアレイによる精巣での遺伝子発現の検討では,RANTES遺伝子の発現低下が母獣に100, 200ng/kgのTCDDが投与された群でみられた。F1世代の雄の繁殖力には影響は見られず,F2世代での新生仔の大きさ,性差にも変化は認めなかった。またF2世代では精子貯蔵の低下,RANTES遺伝子の発現低下もみられなかった。今回の研究ではRANTES遺伝子の発現低下の意義は明らかにされなかったが,ダイオキシン曝露のマーカーとして有用と考えられた。

内 博史 2010/06/07

Key words:

  • RANTES:CCケモカインの一つ。CCケモカイン受容体(CCR5)を発現する白血球(T細胞,好酸球,NK細胞など)の遊走を制御している。
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