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Predictors of Serum Dioxins and PCBs among Peripubertal Russian Boys

Environmental Health Perspectives 117(2009)1593-1599

【要旨】
 ダイオキシンとPCBsの汚染源と曝露経路についての研究はなされているが、子供への曝露についての情報は限られている。母乳育児や食べ物は若年期における曝露に関して重要な寄与因子である。本研究ではその他の幼年期のそれらへの曝露に関する寄与因子についてさらに詳しく知るため、環境中のダイオキシンレベルが高い町の子供の集団について調査を行った。
 著者らはロシアのチャパエヴスクに住む8歳から9歳の男児の血清中のPCDDs・PCDFs・Coplanar-PCBs、TEQsおよびPCB濃度に関連する因子について調査することを目的とした。方法はロシアのチャパエヴスクに住む男児482人の対数変換したこれらの濃度と身体測定値、人口動態学的因子、地理的因子、食生活に関する因子との関係を、直線回帰モデルを使って解析を行った。
  結果は総2005TEQs 中央値は21.1pg/g lipid(25パーセンタイル:14.4、75パーセンタイル:33.2)であった。年齢が高く、その地域の食べ物を摂取し、より長い間母乳を飲み、母親がKhimprom chemical plant(塩素化薬品を作る会社)に雇われるか、または庭いじりをしていた男児で、ダイオキシンとPCBsの濃度が有意に高かった一方で、BMI(body mass index)が高い男児、より高い教育を受けた両親をもつ男児で有意に血清中のダイオキシンとPCBsの濃度は低かった。地理的にはKhimprom工場から2km以内に住む男児の総TEQs(pg/p lipid)(修正平均値=30.6;95% CI,26.8-35.0)は5km以上はなれたところに住む男児よりも高かった(修正平均値=18.8;95%CI,17.2-20.6)。
 以上の結果より、チャパエヴスクの子供達の間では母親の庭いじりやその地域で採れた食べ物、居住区がKhimprom工場に近いといった地域特有のダイオキシンとPCBs曝露源があることが示唆された。


塚本 美鈴 2010/08/04

Key words:

  • TEQ:毒性等量。最も強いダイオキシンである2,3,7,8-TCDDの毒性を1としたときに,他のダイオキシン異性体の毒性の強さを相対的に表した数値(TEF:毒性等価係数)と個々のダイオキシン異性体の濃度を乗じて得られた毒性量の総和。
  • BMI:体重(kg)÷ 身長(m)2
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