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The aryl hydrocarbon receptor (AHR), a novel regulator of human melanogenesis.

Pigment Cell Melanoma Res. 2010; 23: 828–833.

【要旨】

油症や台湾油症の被害者では,塩素痤瘡に加えて高率に皮膚,粘膜の色素沈着が認められたが,その機序は明らかでなかった。著者らはヒト皮膚からメラノサイトを分離し,3日間TCDD存在下に培養することで,メラノサイトのtyrosinaseが活性化されることを示した。さらにメラノサイトをTCDD存在下に5日間培養することで,メラノサイトの増殖が誘導されることなく,メラニンの産生が増強されることを示した。またこのtyrosinaseの活性化およびメラニンの産生増強は,aryl hydrocarbon receptor (AhR)のアゴニストでありTCDDを競合的に阻害する,3’-methoxy-4’-nitroflavoneやα-naphthoflavoneにより抑制された。さらにreal-time PCRによりメラノサイトのtyrosinase, tyrosinase-related protein 2遺伝子の発現がTCDDによって誘導されることも示された。同様のtyrosinaseの活性化はAhRの内因性リガンドである6- formylindolo[3,2-b]carbazoleでも誘導された。
これらのことからダイオキシン類はAhRを介して直接メラノサイトに作用し,メラニン産生を誘導することで,皮膚,粘膜の色素沈着を引き起こしている可能性があることが示唆された。

<Key word>
tyrosinase, tyrosinase-related protein 2:メラニンの産生を制御する遺伝子


内 博史 2010/10/31

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