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Quantitative characterization of changes in bone geometry, mineral density and biomechanical properties in two rat strains with different Ah-receptor structures after long-term exposure to 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin.

Toxicology 2010;273:1-11.

【要旨】
1)背景:産業化学製品や環境汚染物質は骨のモデリングやリモデリングを阻害しうる。近年2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD)暴露による詳細な毒物学的骨研究が行われており、TCDDはそのほとんどの毒性効果が芳香族炭化水素受容体(aryl hydrocarbon receptor: AhR)を介して作用することが明らかとなっている。

2)目的:本研究の目的は、TCDDの長期暴露による骨形状、骨密度、および生体力学特性を定量的に評価し、さらにTCDDによって引き起こされる骨変化におけるAhRの役割を調査することである。本研究に使用される組織試料はTCDDに暴露されたL-E ratとH/W rat由来のものである。これらのratはAhRの構造が異なるため、TCDD毒性に対する感受性が著しく異なっている。

3)方法:10週齢の雌のL-EおよびH/W ratに対して、一日投与量に換算して0, 1, 10, 100, 1000 ng TCDD/kg bwのTCDDを、週1回20週間の皮下投与を行った。 それぞれのratから摘出した大腿骨、脛骨、および椎体を、周辺定量CT(pQCT)および生体力学試験により解析した。解析された骨パラメーターの基準投与量を確立するために用量反応モデリングを行い、TCDD暴露により影響されるそれらのパラメーターの種による感受性の違いを定量化した。

4)結果:骨形状および生体力学的パラメーターはTCDD暴露の影響を受けていたが、骨密度はほとんど影響を受けていなかった。脛骨近位の骨梁と脛骨骨幹部の皮質内周辺は最も高い最大の反応を示すパラメーターであった。TCDD投与に対する種の違いは有意に認められ、L-E ratは最も感受性の高い種であった。脛骨近位の横断領域は最も種の違いが明らかであった(約49倍)。

5)結論:本研究は、健康リスク評価の観点との関連があるTCDDの暴露量において、TCDDがもたらす骨変化について新しい情報をもたらした。さらに、今回得られた結果はTCDDによる骨変化におけるAhRの明確な役割をいっそう支持するものであり、基準量モデリングは骨毒性パラメーターの定量的評価に適したアプローチであることが示唆された。


本村 悟朗 2010/12/1

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