Journal Club

Aryl Hydroxycarbon Receptor (AhR) Activation Reduced Dendritic cell function during Influenza Virus infection

Toxicol Sci 2010;116:514-22.

【要旨】
TCDD(2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxi) などのリガンドによるAhRの活性化は、T細胞依存性の免疫応答を抑制することが知られているが、その細胞内の標的や、機序は明らかにはされていない。
本論文の研究者らはこれまでTCDDを介したAhRの活性化はインフルエンザウイルスに特異のCD8陽性T細胞の増殖と分化を間接的に抑制することを示してきたが、そのことは、修飾細胞がインフルエンザ感染において重要なAhRの標的であることを示唆している。
呼吸器官の樹状細胞はウイルスが感染し抗原提示を受けると、リンパ節へ遊走し、そこでナイーブCD8陽性細胞を活性化するのに重要な役割を果たす。本研究ではインフルエンザウイルス感染時にAhRの活性化がどのように肺の樹状細胞に変化をもたらし、縦隔リンパ節まで遊走する過程やそこでの機能に影響を与えるのか実験を行った。
それによると、AhRの活性化は樹状細胞の遊走能と、縦隔リンパ節から分離された樹状細胞のナイーブCD8陽性細胞の活性化能を傷害した。AhR変異マウス(AhRタンパクのDNAへの結合部分が欠損したもの)を用いると、TCDDによるこれらの抑制効果(TCDDを介したAhR活性化がおこす免疫応答の抑制効果)は活性化したAhR複合体のDNAへの結合を必要であることを示している。
これらの新しい知見より、我々の環境中の化学物質を介したAhRの活性化はナイーブCD8陽性細胞を分化させる樹状細胞の機能に影響を与える事、樹状細胞内の免疫制御遺伝子は重要なAhRの標的である事が考えられる。また、今回の結果は(AhRのリガンドになりうる)環境中物質やその他のAhRリガンドは呼吸器感染に対する感受性や免疫応答の違いに寄与していることを強くうかがわせるものである。


塚本 美鈴 2011/1/11

閉じる