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B lymphocyte-induced maturation protein 1 is a novel target gene of aryl hydrocarbon receptor

Journal of Dermatological Science 58 (2010) 211-216

【要旨】
背景:AhR(aryl hydrocarbon receptor)はリガンドにより活性化される転写因子である。化学発ガン物質などの環境因子がAhRに結合すると、AhRは核に移行し、転写ターゲットの遺伝子、例えばP450といった薬物代謝酵素などを活性化する。最近の研究で、AhRは細胞増殖や分化、免疫システムや発生を含む様々な反応に関わっていることが分かってきている。

目的:皮膚におけるAhRの生理学的役割を検討した。

方法:マウス皮膚で、AhRの分布を免疫組織学的に検討した。AhRにより活性化された目的遺伝子の発現はRT-PCRを用いて検討した。

結果:AhRは脂腺で転写因子の1つであるBlimp1と共存していることが分かった。また今回の検討で、脂腺やケラチノサイトではBlimp1のmRNAの発現はAhRのリガンド(メチルコランセリン等)によって誘導されていることが分かった。同様に、AhRリガンドを刺激し細胞内に誘発するとされるUVBを暴露しても、Blimp1のmRNAが増加していた。
こうしたリガンドによって誘発されるBlimp1はAhRおよびARNTの発現が必要であることがわかった。その理由は、AhRもしくはARNTをsiRNAを用いて特異的に阻害するとBlimp1のmRNA発現が抑制されたからである。
キナーゼ阻害薬(staurosporine)を用いた検討を行ったところ、Blimp1の誘導はCYP1A1を誘導せずに行われていることが分かった。キナーゼC促進薬(TPA)はBlimp1を誘導し、CYP1A1を誘導しないことが分かった。

結論:これらの検討からBlimp1は表皮ケラチノサイトと脂腺細胞でAhRのターゲット遺伝子であることが示唆された。


鍬塚 大 2011/4/1

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