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Activation of the aryl hydrocarbon receptor suppresses sensitization in a mouse peanut allergy model.

Toxicol Sci. 2011 Jul 29. [Epub ahead of print]

【要旨】
西側諸国では食物アレルギーが健康上の問題として増加している。食物アレルギーにおいて、制御性T細胞(Treg細胞)がアレルギーの感作やアレルギー反応の強さなどを制御することはすでに示されている。また加えて、AhRの活性化は、制御性T細胞を誘導することによりT細胞の反応を制御することが解っている。そのため筆者らは、AhRシグナル伝達系の活性化により制御性T細胞が誘導され、食物アレルギーの発生を抑制するのではないかと考え、ネズミにおけるピーナッツアレルギーの実験系を用いて研究を行った。

ピーナッツの抽出物(PE)とコレラ毒を経口投与し感作したマウスに、様々な濃度のTCDDを感作3日前と感作11日後に経口投与した。PEで刺激する際に、抗CD25抗体を投与することにより制御性T細胞(CD4+CD25+Foxp3+細胞)を除去して、制御性T細胞の機能的役割を調べた。

その結果、TCDDは濃度依存的にピーナッツによる感作を抑制した。リンパ節と脾臓においては、T細胞中の制御性T細胞(CD4+CD25+Foxp3+細胞)の数でなく比率がTCDDの濃度依存性に増加した。そして制御性T細胞(CD4+CD25+Foxp3+細胞)を除去すると、TCDDによって引き起こされたアレルギー抑制効果(PE特異的な抗体量やPEによって引き起こされるサイトカイン産生など)が著しく改善した。

これにより筆者らはTCDDによるAhRの活性化がTh2による食物アレルギー反応の発生を抑制することを初めて証明した。CD4陽性T細胞が制御性T細胞(CD4+CD25+Foxp3+細胞)集団へシフトすることにより、この影響が起こることが解った。これは、AhRシグナル伝達系が食物アレルギーの治療のターゲットとして可能性があることを示唆する。


用語
●感作: ある抗原に対しアレルギー反応をおこしうる状態にすること
●AhR: aryl hydrocarbon receptor ダイオキシン受容体
●TCDD: 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin. ダイオキシン類の一つAhRのリガンドの1種

安川 史子 2011/9/1

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