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Activation of Aryl Hydrocarbon Receptor (AhR) Leads to Reciprocal Epigenetic Regulation of FoxP3 and IL-17 Expression and Amelioration of Experimental Colitis.

PLoS One. 2011;6(8):e23522. Epub 2011 Aug 15.

【目的】
Aryl hydrocarbon receptor (AhR)は、環境中の化学物質による生化学的な効果または毒性効果を調整することがよく知られている。さらに最近では、AhRはFoxP3陽性制御性T細胞(Treg)とTh17細胞の分化を制御することが示されている。しかし、その正確なメカニズムは不明である。今回我々は、AhRのリガンドである2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD)がエピジェネティックな制御に影響するかを研究し、それによってTreg/Th17細胞の分化が変化し、結果的に大腸炎が抑制されるかを検討した。


【方法と主な知見】
C57BL/6マウスにDextran sodium sulphate (DDS)投与したところ、急性大腸炎を発症し、有為な体重減少、腸の短縮化、粘膜潰瘍、CXCR3陽性T細胞と炎症性サイトカインの増加が認められた。興味深いことに、TCDD単回投与(25μg/kg)によって大腸炎の臨床症状及び炎症所見がすべて減弱した。大腸炎発症時に、腸管固有層(lamina propria: LP)と腸間膜リンパ節(mesenteric lymph nodes: MLN)におけるT細胞の解析を行ったところ、Tregの減少とTh17細胞の誘導の増加が認められ、さらにこの現象はその後にTCDD投与を行うと逆転することが確かめられた。

TCDD存在下において、AhR+/+マウス由来のT細胞の活性化は、Tregの分化を促進し、一方でTh17細胞への分化は抑制された。AhR-/-マウス由来のT細胞では、この現象は認められなかった。大腸炎発症時に、LPとMLNにおける細胞を解析したところ、FoxP3のプロモーターのメチル化が増加しており、一方でIL-17のプロモーターでは脱メチル化が増加していた。この現象はその後にTCDD投与を行うと逆転することが確かめられた。


[結論と意義]
これらの研究によって、AhRの活性化は、エピジェネティックな制御によってTreg/Th17の分化に相反的な影響を与え、炎症を減弱することが示された。


辻 学 2012/1/1

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