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Polychlorinated biphenyls and Organochlorine Pesticides in Plasma Predict Development of Type2 Diabetes in the Elderly.

Diabetes care. 2011;34:1778-84.

【要旨】
背景:
これまで脂肪親和性のあるPCBなどの残留性化学物質はⅡ型糖尿病との関連性が言われていたが、前向きの研究による証明はあまりされていない。本研究では、高齢者でのⅡ型糖尿病と、残留化学物質との関係を予見する因子について検討した。


方法:スウエーデン ウプサラコミュニティに住む人たちを研究対象とした。2001年4月から2004年6月までに無作為に抽出した70歳になる人1016人が登録、調査されベースラインデータとした。その中から5年後の75歳時(2006年3月から2009年9月)に再度調査をおこなった(70歳時点での対象者のうち81.4%が5年後までフォロー可能であった)。
残留化学物質が測定できたのは989人であった。最終的に725人が観察評価対象となった(もともとⅡ型糖尿病があったもの、フォローできなかったもの、観察期間に死亡したものを除いた数となる)。血漿中の残留化学物質として21種類(14種のPCB congeners、5種の有機塩素農薬、1種のオクタクロロジベンゾpダイオキシン、1種の臭素化ジフェニルかcongener)を測定した。


結果:ベースライン時点での糖尿病患者112名のうち、インスリン使用者が16.1%、糖尿病薬使用者が53.6%であった。一方、5年間での糖尿病発症者は36名でインスリン使用者が11.1%、糖尿病薬使用者が30.6%であった。ベースライン時点での糖尿病有病率と残留化学物質の関係を見ると、14種のPCB中9種で、quintileでみたQ5群について有病率に有意差がみられたが、PCB congener105、118および153については濃度が高くなればなるほど有意差をもって有意糖尿病有病率が上がる傾向にあった。有機塩素農薬ではtrans-nonachlorとp-p’-2,2-Bis(4chlorophenyl)-1,Ⅰ-dichloroethene(DDE)の濃度についてⅡ型糖尿病有病率に有意な関係が見られた。集約濃度では有意差をもって濃度が高くなればなるほど有病率は上がっていた。
5年間での糖尿病発生率については、PCB congener74、99、138、194、206で濃度に関係して有意に発生率があがった。しかし有意差のなかった105、118、156においてもQ2群で有意に発生率が上がっていた。ただしその後の伸びがみられなかった。14種のPCBを集約した濃度で見てみると、有意差をもって濃度に関係して糖尿病発生率は上っていた。有機塩素農薬ではtrans-nonachlorのみが濃度に関係して発生率が上がったが、3種を集約した濃度でみると、有意差をもって濃度に関係して糖尿病発生率は上がっていた。
単回帰分析でみると(年齢、喫煙、運動、アルコール摂取、総コレステロール、中性脂肪で調整)集約PCB濃度のquintile群と糖尿病発生率の相関は、胴周囲測定と糖尿病発生率ほどに強い相関があった。集約有機塩素農薬濃度に関しては相関が見られたが、胴周囲測より弱かった。これらPCB濃度および有機塩素農薬濃度をこれまでわかっている糖尿病発生のリスク分類因子に加えると発生の危険性を予測するのによいことも検証にてわかった。


塚本 美鈴 2012/2/14

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