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Non-dioxin-like AhR Ligands in a Mouse Peanut Allergy Model

Toxicol Sci 2012;128:92-102.

我々は以前、TCDD1)によるAhRの刺激が、CD4+CD25+Foxp3+ T細胞への機能転換を介して、少なくとも部分的にはピーナッツの感作を抑制することを示した。TCDDに続いて、他多数のAhRリガンドの存在が示されている。本研究で、我々は構造が異なる3つの非ダイオキシン類AhRリガンド( FICZ2), β-NF3), 6-MCDF4) )のピーナッツ感作における効果について検討した。


雌C57BL/6マウスを、コレラトキシンの存在下で強制栄養し、ピーナッツ抽出物で感作した。ピーナッツ感作前あるいは感作中、マウスにそれぞれFICZ, β-NF, 6-MCDF処理した。5日目に十二指腸と肝臓でAhR遺伝子の転写を、脾臓と腸間膜リンパ節ではCD4+CD25+Foxp3+ Treg細胞を観察した。TCDD処理されたマウスを陽性コントロールとして用いた。さらに、in vitroでTCDD, FICZ, β-NF, 6-MCDF代謝が、AhR活性に果たし得る役割について検討するため、マウス細胞であるCAFLUXを使用した。


TCDDではピーナッツの感作を抑制(ピーナッツ特異的IgE, IgG1, IgG2a及び、IL-5, IL-10, IL-13, IL-17a, IL-22, IFN-γの測定による)したが、FICZ, β-NF, 6-MCDFでは抑制しなかった。加えて、FICZ, β-NF, 6-MCDF処理では、TCDD処理に比べて、AhR遺伝子転写(AhR, AhRR, CYP1A1, CYP1A2, CYP1B1測定による)が弱かった。更に、ピーナッツ抽出物感作マウスにおいて、FICZ, β-NF, 6-MCDF処理では、TCDDと対照的に、脾臓と腸間膜リンパ節でのCD4+CD25+Foxp3+ Treg細胞の割合が増えなかった。in vitroでこれらの代謝を阻害すると、AhR活性は向上した。


これらの結果より、TCDDはピーナッツ感作を抑制するが、FICZ, β-NF, 6-MCDFでは抑制しない。代謝作用の違い、AhRとの接合性の違い、及びそれに続く遺伝子転写の違いがこれらの結果の根拠になる可能性があり、食物アレルギー反応のおけるAhRの役割について更なる検討が必要である。



1) TCDD: 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin

2) FICZ: 6-formylindolo[3,2-b]carbazole

3) β-NF: β-naphthoflavone

4) 6-MCDF: 6-metyl-1,3,8-trichlorodibenzofuran


小池 雄太 2012/11/1

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