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Activation of aryl hydrocarbon receptor by Tranilast, an anti-allergy drug, promotes miR-302 expression and cell reprogramming

J Biol Chem, in press, 2013

【要旨】

miR-302 は体細胞を多能性幹細胞へとリプログラミングすることができる。したがって,生体内で miR-302 を増加できれば,細胞のリプログラミングを促進できると考えられる。
そこで筆者たちは miR-302 のプロモーターを用いたプロモーターアッセイにより,miR-302 を発現誘導できる化合物の探索を行った。その結果,抗アレルギー薬として知られているトラニラストが miR-302 を顕著に増加させることを明らかにした.miR-302 のプロモーター領域には3つの Aryl hydrocarbon receptor (AhR) 結合配列が存在するが,そのうち2つを使用して発現誘導していることも示した。
また,AhR shRNA により,miR-302 の増加が抑制されることも確認した。その他の miRNA には影響を与えていなかった。さらに,AhR 阻害剤 (CH-223191) でも同様の結果が得られていた。興味深いことに,AhR ligand として知られている FICZ 等,多くの AHR 活性化剤でも miR-302 の発現が誘導されることを明らかにした。


miR-302 は前述の通り,多能性幹細胞へのリプログラミングを促進することが知られている。そこで,筆者たちはトラニラストが MEF (マウス胚線維芽細胞) から iPS (人工多能性幹細胞) を作製できるか検討した。その結果,トラニラストの濃度依存的に iPS 細胞への誘導促進が認められた。miR-302 を抑制することで,iPS への誘導が阻害されることも確認した。また,AhR shRNA,AhR 阻害剤により,iPS への誘導が抑制されることも明らかにした。さらに,FICZ をはじめとした AhR 活性化剤でも iPS への誘導が認められた。トラニラストと FICZ 等の併用による相加効果は見られなかったことから,作用機序が AhR であることが裏付けられた。


以上の結果より,AhR の活性化による miR-302 の誘導が体細胞のリプログラミング促進法になり得ることを示した。


古賀 沙緒里 2013/08/07

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