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Activation of Aryl Hydrocarbon Receptor Dissociates Fatty Liver from Insulin Resistance by Inducing FGF21

Lu P, et al. Hepatology, in press, 2015

 Aryl hydrocarbon receptor (AhR) はダイオキシン受容体として知られており,従来から外因性の毒物を認識する外来異物認識受容体と考えられてきた。今回,筆者らは, AhR の肝臓または全身性における役割を検討し,AhR が脂肪肝やエネルギー代謝に与える影響を明らかにした。また,その分子メカニズムとして作用する内分泌因子の同定も行った。本研究では,肝臓特異的に恒常的に活性化したヒト AhR を過剰発現させたマウス (TG マウス) を用いている。


 はじめに,TG マウスを解析した結果,重度の脂肪肝を呈していたにも関わらず,高脂肪食負荷による肥満やインスリン抵抗性を改善していることが分かった。実際,TG マウスでは白色脂肪細胞量が減少しており,脂肪組織中のマクロファージの浸潤も低下していた。血糖値の低下も認められ,GTT および ITT も有意に改善していた。エネルギー代謝も亢進しており,褐色脂肪細胞量の増加も認められた。
 次に,この作用メカニズムの解明を行った。以前より,TCDD (代表的な AhR のリガンド) が FGF21 を増加させることが分かっていたが,TG マウスの肝組織中および血中で FGF21 が有意に増加していることが明らかになった。そこで,TG マウスの FGF21 を shRNA によって抑制したところ,興味深いことに,脂肪肝も全身性のインスリン高感受性も減弱することが示された。したがって,TG マウスの表現型は FGF21 を介していることが示唆された。さらに,Fibroblast growth factor 21 (FGF21) が AhR の直接的な標的遺伝子であることも明らかにした。


 以上より,AhR/FGF21 経路が脂質およびエネルギー代謝に関与していることが示され,環境因子が代謝系に影響を与える可能性が示唆された。


古賀 沙緒里 2015/02/02


【Keywords】

aryl hydrocarbon receptor (AhR) : リガンド活性化型の転写因子であり,核内受容体のひとつ。
  代表的なリガンドとして環境物質であるダイオキシンなどが知られている。
TCDD : 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin. ダイオキシン類の一つ。
Fibroblast growth factor 21 (FGF21) : FGF のファミリーではあるが,成長因子ではなく内分泌因子であると
  考えられている.主に肝臓で産生されるが,脂肪細胞や筋組織でも発現が認められる。

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