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Cutting Edge: AhR Is a Molecular Target of Calcitriol in Human T Cells.

Takami M, et al. J Immunol. 2015 Sep 15

(背景)
 ビタミンD(Vit D)の活性代謝産物であるカルシトリオールは単球、樹状細胞、胸腺や末梢のT細胞やB細胞に発現しているVit D受容体に結合して免疫を制御する。IL-9を産生するCD4T細胞のサブセット、Th9細胞は気管支喘息の病態に関与しており、カルシトリオールはマウスTh9細胞のVit D受容体(VDR)に作用してIL-10依存性に抑制作用を発揮するが、ヒトTh9細胞に対する作用は分かっていない。
 近年、芳香族炭化水素受容体(AhR)は、制御性T細胞(Treg)やTh17細胞、Th22細胞など多くのT細胞サブセットの分化を制御する転写因子であることが明らかになっている。また、AhR遺伝子プロモーター領域にはVDRの結合部位があることが確認されている。
 この研究では、カルシトリオールがヒトTh9細胞への分化を制御する機序について、AhRに着目して解明した。

(結果・考察)
 カルシトリオールは、Th9細胞への分化を誘導する条件下で培養したT細胞のIL-9産生を抑制した。また、Th9細胞への分化を制御している転写因子のうちBATFの発現を減少した。
 他のTh2細胞サブセットやTregと比べてTh9細胞で高く発現している遺伝子を調べたところ、その多くがAhRとERGの2つの転写因子で制御されていた。カルシトリオールはnaïve CD4細胞、Th9細胞へ分化誘導したT細胞のAhRの転写を抑制した。また、AhRアンタゴニストやAhR遺伝子ノックダウンでAhRの機能、発現を抑制すると、Th9細胞へ分化誘導してもIL-9産生細胞が減少し、BATFの発現も減少した。
 以上より、カルシトリオールはAhRの発現を抑制するため、BATFの発現が低下し、その結果、Th9細胞への分化が抑制されることが明らかになった。


【Key word】
Th9細胞:IL-9を産生するCD4 T細胞サブセット。IL-9は、肥満細胞の増殖、IgE産生、好酸球の成熟を抑制したり呼吸上皮細胞による粘液産生を抑制する作用をもつ。

溝手 美華 2015/11/17

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