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Resveratrol supports and alpha-naphthoflavone disrupts growth of human ovarian follicles in an in vitrotissue culture model.

Hao J, et al. Toxicol Appl Pharmacol. 338 (2018). 73-82

不妊は約15%の罹病率を持つ世界的な健康問題である。内分泌かく乱物質(EDCs)の曝露の影響と考えられているが、女性の生殖細胞への影響を調べた研究は少ない。Aryl hydrocarbon receptor (AHR)を介した毒性や生殖機能への影響はこれまでに報告されている。そこで、この研究ではヒトの卵巣組織培養モデルを用いて、ヒトの卵胞に対するAHR調節因子の影響を検証した。なお、AHR調節因子としてRSVL1)、aNF2)、FICZを選択した。


 まずFICZはAHRのagonist(作動薬)、aNFはantagonist(拮抗薬)であることが証明された。RSVLは僅かにCYP1B1を減少させるも、有意ではなかった。なお、ヒトの卵巣組織でもAHRは発現していた。


 さらに、卵胞の成熟、生死、ステロイド産生について、ヒト卵巣組織の組織染色、TUNEL法、条件培地下でのステロイドホルモンの解析によりそれぞれ評価した。その結果、卵胞の成熟はRSVLにより促進した。ヒトの2次卵胞の後期である前胞状卵胞への成長は、卵母細胞の成長と顆粒膜細胞の増殖によると言われている。RSVL、FICZで処理した組織では、卵母細胞と卵胞の直径に正の相関関係がみられたが、aNFで処理すると卵母細胞に対して卵胞の直径は小さく、2次卵胞への成長を妨げられていた。これにはaNFによるテストステロンの産生増加、エストラジオールの減少の影響が示唆された。


 以上より、AHR調節因子による卵胞への影響は様々であることが分かった。AHR拮抗薬であるaNFは、ヒトの卵胞の成長を抑制した。また、この研究により、化学物質の卵胞への影響を検証する上で、ヒトの卵巣組織の培養モデルは有用であることも明らかになった。



Keywords;
1) RSVL; Resveratrol; コケモモやピーナッツ、葡萄に含まれるポリフェノールのこと
2) aNF; Alpha-naphthoflavone; 一般的にAHR antagonistとして用いられている合成フラボン誘導体のこと



小田 真理 2018/1/5


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