当科における臨床研究
本邦における乳房外パジェット病の予後調査
1.臨床研究について
九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。このような診断や治療の改善の試みを一般に「臨床研究」といいます。その一つとして、九州大学病院皮膚科では、現在乳房外パジェット病の患者さんを対象として、本邦における乳房外パジェット病の予後調査についての検討に関する「臨床研究」を行っています。
今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、令和4年5月31日までです。
2.研究の目的や意義について
本邦における乳房外パジェット病についての調査研究を行い,患者さんの背景及び治療方法の現状を把握し,今後乳房外パジェット病に対して新規研究試験を計画する際の有用な情報となります。
乳房外パジェット病は稀少疾患のため世界的に信頼できる疫学的データが少なく、浸潤癌の頻度や進行例の5年生存率など臨床上必要な情報が不足しているのが現状です。また,予後や治療法選択の基準となる病期分類も非悪性黒色腫皮膚がんのものは現状にあっておらず、2016年にOharaらが腫瘍の厚さやリンパ節転移数を重視した病期分類を提唱したところです。
これまで,乳房外パジェット病に関して内外から症例集積研究は行われていますが,新たな病期分類を用いた,現在行われている治療の実態を反映した多数例の報告はありません。統計的に意味のある症例数を集積するためには多施設での検討が必要であり,JCOG皮膚腫瘍グループ参加施設およびオブザーバー参加施設に協力を依頼し研究を行うこととなりました。実臨床で実際に行われている治療およびその効果を把握することは日常診療の一助となるだけでなく,今後乳房外パジェット病に対して新規臨床試験を計画する際の有用な資料となりうると考えられます。
3.研究の対象者について
2015年1月1日から2019年12月31日の期間で九州大学皮膚科ならびに共同研究施設において乳房外パジェット病に対して、治療を行った方を対象とします。
(研究全体 1000例、九州大学30例)
4.研究の方法について
この研究を行う際は、カルテより以下の情報を取得します。情報収集の作業に当たる人員は医師をはじめとする医療知識のある研究者です。
〔取得する情報〕
年齢,性,初診日,部位,脈管浸潤,厚さ,リンパ節転移,遠隔転移,センチネルリンパ節生検施行の有無,初期治療の種類,治療開始日,治療効果,再発の有無,再発確認日,最終観察日,転帰
富山県立中央病院皮膚科へ研究対象者の情報をメールにて送付し、詳しい解析を行う予定です。他機関への試料・情報の送付を希望されない場合は、送付を停止いたしますので、ご連絡ください。
5.個人情報の取扱いについて
本研究では、個人情報は、施設内患者番号対照票を用いて連結可能匿名化が行われるため、施設外に患者さんの個人情報が送付されることはありません。施設内患者番号対照票は施設の外部に送付されない事から、情報は連結可能匿名化し提供されることとなり、施設の外部のもの(研究事務局)が患者さん個人の特定をすることはできません。施設への問い合わせなどの連絡の際には、患者登録番号を用います。研究結果は学会発表、論文公表の形で一般に公開されますが、公開される情報には個人情報は一切含まれません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院皮膚科学分野准教授・中原 剛士の責任の下、厳重な管理を行います。
研究対象者のカルテの情報を富山県立中央病院皮膚科へ送付する際には、九州大学にて上記の処理をした後に行いますので、研究対象者を特定できる情報が外部に送られることはありません。
6.試料や情報の保管等について
本調査研究で用いる調査はエクセル入力形式で行います。作成された調査票(連結可能匿名化)は下記研究事務局に返送し、研究事務局において保管します。診療情報システム(電子カルテ)、紙カルテ、画像フィルムからのデータ収集のみで行われ、直接患者本人への調査票、質問票などの新たな調査は行いません。
本研究に関する調査データの電子ファイルの管理は九州大学の個人情報管理規定に基づき実施します。また本研究に関しては、機密保護の観点から識別番号による患者の連結可能匿名化を実施します。また、研究協力施設の担当者が診療情報と切り離した状態で施錠可能な場所に連結票を保管し、データの紛失や流出を防ぐ対策を講じます。
研究終了後は、九州大学九州大学大学院医学研究院皮膚科学分野において同分野准教授・中原剛士の責任の下、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。
7.利益相反について
九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
本研究に関する必要な経費は寄付金であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
8.研究に関する情報や個人情報の開示について
この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
9.研究の実施体制について
この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所(分野名等) | 九州大学大学院医学研究院皮膚科学分野 九州大学病院皮膚科 |
研究責任者 | 九州大学大学院医学研究院皮膚科学分野 准教授 中原剛士 |
研究分担者 | 九州大学病院皮膚科 講師 伊東 孝通 九州大学大学院医学研究院皮膚科学分野 助教 大野 文嵩 |
共同研究施設及び 試料・情報の 提供のみ行う施設 |
施設名 / 研究責任者の職名・氏名 | 役割 |
①富山県立中央病院皮膚科/部長・八田尚人 ②札幌医科大学皮膚科/助教・加藤 潤史 ③北海道大学病院形成外科/教授・山本 有平 ④旭川医科大学皮膚科学講座/教授・山本 明美 ⑤筑波大学医学医療系医学医療系皮膚科/准教授・藤澤 康弘 ⑥埼玉医科大学病院皮膚科/教授・土田 哲也 ⑦埼玉医大国際医療センター/教授・中村 泰人 ⑧埼玉県立がんセンター皮膚科/科長・石川 雅士 ⑨国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科/ 科長・山崎 直也 ⑩がん・感染症センター都立駒込病院皮膚腫瘍科/ 部長・吉野 公二 ⑪慶應義塾大学病院皮膚科/教授・天谷 雅行 ⑫東京大学医学部皮膚科/教授・佐藤 伸一 ⑬新潟県立がんセンター新潟病院皮膚科/科長・竹之内 辰也 ⑭信州大学医学部皮膚科/教授・奥山 隆平 ⑮静岡県立静岡がんセンター皮膚科/科長・清原 祥夫 ⑯名古屋大学医学部皮膚科/教授・秋山 真志 ⑰京都大学皮膚科/教授・椛島 健治 ⑱大阪国際がんセンター腫瘍皮膚科/科長・爲政 大幾 ⑲福岡大学医学部皮膚科/教授・今福 信一 ⑳熊本大学医学部皮膚病態治療再建学/教授・福島 聡 ㉑国立病院機構鹿児島医療センター皮膚腫瘍科・皮膚科/ 科長・松下 茂人 ㉒国立病院機構九州がんセンター皮膚腫瘍科/医長・内 博史 ㉓京都府立医科大学皮膚科/教授・加藤則人 ㉔杏林大学皮膚科/教授・大山 学 ㉕神戸大学皮膚科/准教授・福永 淳 ㉖日本医科大学皮膚科/教授・船坂 陽子 ㉗自治医科大学皮膚科/教授・大槻 マミ太郎 ㉘北里大学皮膚科/教授・天羽康之 ㉙近畿大学皮膚科/教授・大塚 篤司 ㉚獨協医科大学皮膚科/教授・片桐 一元 ㉛がん研有明病院皮膚科/部長・中山耕之介 ㉜久留米大学皮膚科/教授・名嘉真 武国 ㉝福井大学皮膚科/教授・長谷川 稔 ㉞和歌山県立医科大学皮膚科/教授・神人 正寿 ㉟九州大学病院皮膚科/准教授・中原剛士 |
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10.相談窓口について
この研究に関してご質問や相談等ある場合は、事務局までご連絡ください。
事務局(相談窓口) | 担当者:九州大学病院皮膚科 講師 伊東 孝通 連絡先:〔TEL〕092-642-5585(内線5585) 〔FAX〕092-642-5600 メールアドレス:takamiti@dermatol.med.kyushu-u.ac.jp |