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Maternal Resveratrol Therapy Protects Male Rat Offspring against Programmed Hypertension Induced by TCDD and Dexamethasone Exposures: Is It Relevant to Aryl Hydrocarbon Receptor?

Hus CN. et. al. Int J Mol Sci. 2018 Aug 20;19(8). pii: E2459. doi: 10.3390/ijms19082459

 発達段階における内分泌攪乱物質への曝露は、後の成人期における循環器系疾患のリスクになりうる。
 胎児期における2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD: ダイオキシン)への高濃度曝露は、アンジオテンシン投与による高血圧モデルマウスにおいて、成長後の血圧上昇を悪化させることが報告されており、また胎児期のデキサメタゾン(DEX:ステロイド)への曝露も成長後の高血圧に関与することが報告されている。
 TCDDおよびデキサメタゾン(DEX)はAryl hydrocarbon receptor (AHR)によって受容され、生体内においてAhrrCyp1a1の発現上昇など様々な反応を引き起こす。抗酸化作用を持つレスベラトロールはAHRに作用することから、妊娠中のレスベラトロール摂取による雄性仔の血圧上昇抑制作用を調べた。

 妊娠16日~22日のSDラットにDEX(0.1 mg/kg 体重)もしくは溶媒を腹腔内注射により投与し、TCDD (200 ng/kg 体重)もしくはコーン油を妊娠14日~21日および産後7日~14日に経口投与により母親に摂取させた。レスベラトロールは、0.05%になるように飲み水に混ぜることで、妊娠期および授乳期に母親に摂取させた。(ラットの妊娠期間は約21日で、プラグを確認した日を妊娠0(0.5)日目とカウントする。)雌と比較して雄の方が、高血圧になりやすいため、研究にはすべて雄性仔を用いた。

 母親のTCDD経口摂取により、生後2-16週齢の仔において対照群と比較して有意に収縮期血圧の上昇がみられ、さらにDEXの同時曝露により増悪した。一方、母親が妊娠期及び授乳期にレスベラトロールを摂取した場合、生後8-16週目の仔において血圧の上昇が抑えられた。次に血液中のasymmetric dimethylarginine(ADMA:血管を拡張させる作用をもつNO合成酵素を阻害することで血管収縮をもたらす)を測定したところ、DEXとTCDD両方を摂取した母から生まれた仔は、対照群と比較して有意にADMAが高くなっていた。
 一方、レスベラトロールを同時に摂取した母から生まれた仔は、その上昇が抑えられていた。さらに、レスベラトロールの摂取はDEX及びTCDDの摂取による腎組織における核酸酸化障害の進行を抑えた。また、母親のDEXとTCDD摂取による、仔のAhrr及びCyp1a1遺伝子発現上昇は、妊娠期及び授乳期における母親のレスベラトロール摂取により抑制された。

 以上から、妊娠期及び授乳期におけるDEXとTCDD両方の同時摂取は雄性仔における離乳後の高血圧を増悪させること、母親のレスベラトロール摂取はプログラム化された仔の高血圧を抑制することが示唆された。またこの発見は、AHRの阻害剤が、TCDDによる子孫への影響を予防する可能性を示唆している。



湯岑 綾子 2019/01/08


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