Maternal exposure to TCDD during gestation advanced sensory-motor development, but induced impairments of spatial learning and memory in adult male rat offspring.

妊娠中のTCDD曝露はオスのマウスで感覚運動の発達を促進するが、空間学習や記憶の障害を引き起こす

Zhang HJ, Liu YN, Xian P, Ma J, Sun YW, Chen JS, Chen X, Tang NJ.
Chemosphere. 2018 Dec;212:678-686. doi: 10.1016/j.chemosphere.2018.08.118. Epub 2018 Aug 23.
PMID: 30176550

TCDDは高い残存率を持つ環境ホルモンである。低容量でも妊娠中の曝露で胎盤バリアを通過する。TCDD曝露は小児の神経のシステム発達を障害し、後の学習能力を低下させる。しかし、TCDDが引き起こす小児の神経行動学的発達における変化はわかっていない。

妊娠したSprague-Dawleyマウスに経管栄養でTCDD(200 or 800ng/日)もしくは同量の溶媒を妊娠8-14日投与した。子ども早期の神経行動学的発達は産後5日に評価し、開眼は生後10日目からモニターした。成熟したオスは空間記憶と学習能力をモリスウォーターメイズでテストした。海馬nissl染色と星状細胞GFAP染色で星状細胞の活動性を評価した。

これらの結果で、妊娠中のTCDD曝露は運動能の発達と開眼を早めるが、成熟したオスのマウスに空間記憶と学習能力に重大な障害をもたらした。形態学や海馬のCA1領域の神経数は影響を受けなかったが、一方で星状細胞の活動は減少していた。

これらのデータは妊娠中のTCDD曝露が早期の神経行動学的な発達を引き起こすが、成熟したマウスの空間学習や記憶を障害する。減少した海馬の星状細胞の活動が、これらの有害反応に重要な役割を果たすと考える。

江藤 綾佳　2020/12