Journal Club

Murine Coronavirus Infection Activates the Aryl Hydrocarbon Receptor in an Indoleamine 2,3-Dioxygenase-Independent Manner, Contributing to Cytokine Modulation and Proviral TCDD-Inducible-PARP Expression

マウスのコロナ感染はIndoleamin 2,3-Dioxigenaseを介さずに芳香族炭化水素受容体(Aryl Hydrocarbon Receptor: AHR)を活性化し、サイトカイン調節と、プロウイルスのTCDDによるPARPの発現に寄与する。

Matthew E Grunewald, Mohamed G Shaban, Samantha R Mackin, Anthony R Fehr, Stanley Perlman Matthew E Drunewald, et al,
J Virol. 2020 Jan 17;94(3): e01743-19. doi: 10.1128/JVI.01743-19. Print 2020 Jan 17

芳香族炭化水素受容体(Aryl Hydrocarbon Receptor: AhR)は細胞質受容体/転写因子で、病原体に関連した刺激による免疫応答を調節していることが知られているが、ウイルス感染における免疫応答への関与については、不明な点が多い。筆者らは、コロナウイルス(coronavirus: CoV)のプロトタイプである、マウス肝炎ウイルス(mouse hepatitis virus: MHV)感染が、AhRシグナルの下流の制御因子であるTCDD-inducible poly (ADP-ribose) polymerase (TiPARP)を活性化させることを明らかにした。

まず、TiPARPのノックダウンにより、MHVの複製は減弱し、インターフェロンの発現が上昇し、これにより、MHV感染のプロウイルスにおけるTiPARPの必要性が示された。次に、筆者らは、MHV感染マウスのマクロファージと樹状細胞、肝臓において、in vitro, in vivoの両方でMHVの複製により、AhRの下流のTiPARP以外の、CYP1B1やAhRなど他の遺伝子発現も誘導されることを明らかにした。また、MHV感染に伴う宿主のAhRの活性化と同様に、AhRの活性化もしくは阻害によって、感染によって生じるサイトカイン、特に、IL1β、IL10, TNFαの発現がコントロールされることを示した。さらに、食物や紫外線などの条件により、indoleamine 2,3-dioxygenase (IDO1)は、AhRを活性化させ、それによりIDO1の発現が増強するという、AhR発現のポジティブフィードバックを来すことが知られているが、MHV感染は、Wild typeと、IDOノックアウトマクロファージのいずれにおいてもAhRを活性化させたことから、MHV感染は、IDO1の活性化とは別の経路でAhRを活性化させることがわかった。

以上のことから、筆者らは、コロナウイルス感染は、IDO1を介さずに、AhRを活性化させ、プロウイルスの状態に必要なTiPARPを含む下流の制御因子を活性化し、サイトカインの発現を調整することを示し、コロナウイルスの病態におけるAhRシグナルの役割を初めて明らかにした。

キーワード)
AhR, IDO1, TiPARP, コロナウイルス、マウス肝炎ウイルス(mouse hepatitis virus: MHV)



冬野 洋子 2021/04


閉じる