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Inhibiting SARS-CoV-2 infection in vitro by suppressing its receptor, angiotensin-converting enzyme 2, via aryl-hydrocarbon receptor signal

芳香族炭化水素受容体シグナルを介したその受容体であるアンジオテンシン変換酵素2の抑制によるSARS-CoV-2のin vitro感染抑制効果

Keiji Tanimoto, Kiichi Hirota, Takahiro Fukazawa, Yoshiyuki Matsuo, Toshihito Nomura, Nazmul Tanuza, Nobuyuki Hirohashi, Hidemasa Bono, Takemasa Sakaguchi
Sci Rep 2021 Aug 17;11(1):16629. doi: 10.1038/s41598-021-96109-w.

SARS-CoV-2感染の分子メカニズムを理解することはCOVID-19に対する有効治療を開発するのに極めて重要であるため、アンギオテンシン転換酵素2(ACE2)を介したSARS-CoV-2の内部メカニズムに注目した。
煙草の煙は一般的にはCOVID-19の病因に有害であると言われるが、たばこの煙成分(CSE)による治療は、驚くことに、HepG2細胞においてACE2発現を抑制する効果があることがわかった。
したがって、哺乳動物細胞において、CSEがACE2発現に対する効果・メカニズムについて明らかにすることを目的とした。
RNAシーケンス分析によると、芳香族炭化水素受容体(AHR)によって制御される遺伝子の誘導と、ACE2の発現抑制効果は逆相関する可能性が示唆された。
したがってAHRアゴニストである6-ホルミル化カルバゾール(FICZ)やオメプラゾール(OMP)を用いて、これらがACE2発現に関与するか否かについて評価を行った。
FICZ/OMPともに、量依存性に明らかにACE2の発現を抑制し、またCYP1A1を誘導した。
遺伝子ノックダウン実験により、FICZ治療ではAHR依存的にACE2を減少させる可能性が示唆された。
このように、AHRアゴニストによる治療では、SARS-CoV2に特異的なヌクレオカプシド蛋白に反応するイムノブロット分析によって示されるように、Vero E6細胞へのSARS-CoV-2感染を防御した。
今回、FICZやOMPのようなAHRアゴニストによる治療は、AHR活性化を介してACE2発現を抑制し、哺乳動物においてSARS-CoV-2感染を抑制することができることを示した。



原 茉実 2021/06


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