Journal Club

Metalloproteinase 1 downregulation in neurofibromatosis 1: Therapeutic potential of antimalarial hydroxychloroquine and chloroquine

神経線維腫症1型におけるMMP1の低下:抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンおよびクロロキンの治療薬としての可能性

Gaku Tsuji, Ayako Takai-Yumine, Takahiro Kato, Masutaka Furue
Cell Death Dis. 2021 May 19;12(6):513. doi: 10.1038/s41419-021-03802-9.

神経線維腫症1型は、NF1遺伝子の変異による常染色体優性遺伝病である。その特徴は、皮膚における神経線維腫や良性の末梢神経鞘腫瘍である。我々は、NF1患者の皮膚神経線維腫におけるコラーゲンおよびマトリックスメタロプロテアーゼ1(MMP1)の発現を解析し、コラーゲンの過剰発現とMMP1の発現が低下していることを見出した。そして、神経線維腫の新しい治療薬を見出すため、培養したNF1患者の線維芽細胞において、Ras経路のリン酸化を解析し、この経路をブロックする治療薬として、PD184352、U0126、rapamycin、chloroquine (CQ), hydroxychloroquine (HCQ) および bafilomycin A (BafA) について有効性を検証した。

その結果、NF1患者の線維芽細胞において低下したMMP1はCQとHCQによって回復するが、Ras経路の阻害薬では回復しないことを見出した。さらに、CQ,HCQによるMMP1の増加は、芳香族炭化水素受容体(AHR)の活性化とERKのリン酸化に依存していることが明らかになった。これらの知見は、CQ,HCQがNF1患者の神経線維腫の治療薬の候補となる可能性を示唆するものである。



辻 学 2021/11


閉じる