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Inhibition of 6-formylindolo[3,2-b]carbazole metabolism sensitizes keratinocytes to UVA-induced apoptosis: Implications for vemurafenib-induced phototoxicity

FICZの代謝阻害はUVA誘発アポトーシスに対してケラチノサイトを感作する:vemurafenib誘発性の光毒性との関連について

Katharina M Rolfes, Natalie C Sondermann, Christian Vogeley, Julien Dairou, Viola Gilardino, Ragnhild Wirth, Stephan Meller, Bernhard Homey, Jean Krutmann, Dieter Lang, Motoki Nakamura, Thomas Haarmann-Stemmann
Redox Biol. 2021 Oct;46: 102110. doi: 10.1016/j.redox.2021.102110. Epub 2021 Aug 17.

ケラチノサイトに紫外線(UV)Bを照射すると、トリプトファンのphotoproductであるFICZが生成し、これは芳香族炭化水素受容体(AHR)の高親和性リガンドである。その結果、AHRシグナルが活性化され、チトクロームP450(CYP)1A1の発現が誘導され、FICZが代謝される。重要なことは、FICZはUVA照射に対するナノモルレベルでの光増感剤でもあることである。

本研究では,ヒト表皮角化細胞におけるAHR-CYP1A1軸の操作がFICZ/UVA誘発性の光毒性に影響を与えるかどうか,またこの相互作用がBRAF阻害剤ベムラフェニブの光毒性にメカニズム的に関連するかどうかを評価した。AHRアゴニストでケラチノサイトを処理すると,CYP1A1によるFICZの代謝が促進され,UVAによる光増感が抑制された。一方,AHRシグナルまたはCYP1A1酵素活性を阻害すると,FICZの蓄積とUVA誘発性の酸化ストレスおよびアポトーシスに対する感作がみられた。ケラチノサイトをベムラフェニブに曝露しても、同じ結果が得られた。特に、CYP表現型の解析により、ベムラフェニブは主にCYP1A1によって代謝され、CYP2J2およびCYP3A4による代謝の程度は低いことが判明した。したがって、ベムラフェニブは、CYP1A1を介したFICZの代謝を阻害することによって、UVA誘発アポトーシスに対してケラチノサイトを感作すると思われる。

このアポトーシスの促進作用とは対照的に、UVBでダメージを受けたケラチノサイトをベムラフェニブで処理するとアポトーシスが抑制され、このプロセスが本剤の皮膚発がん性に寄与している可能性があることが示された。この結果は、ベムラフェニブの光増感作用のメカニズムに迫るものであり、薬物間相互作用に関わる代謝に関する新たな情報を提供する。本研究結果は、AHR-CYP1A1軸が皮膚の有害事象の発生に寄与していることを強調するものである。



辻 学 2022/03


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