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Executive Function Deficits and Social-Behavioral Abnormality in Mice Exposed to a Low Dose of Dioxin in Utero and via Lactation
子宮内および授乳をとおして低用量ダイオキシンに曝露したマウスにおける実行機能欠損および社会的行動障害について

PLoS One, on line, 2012;7(12):

【要旨】

近年増加しつつある精神衛生上の問題については、環境化学物質への曝露によって引き起こされる異常な脳の発達が部分的に関与しているとされている。しかし、その因果関係を評価することは、とりわけ低濃度の曝露の場合には困難である。


本研究では、著者らが近年開発した自動化された行動柔軟性試験装置(InteliCage)と14の脳野の免疫組織染色(神経活性化物質Arc)を用いて、子宮および授乳を通してダイオキシンに曝露されたマウスの高次脳機能について研究を行った。
C57BL6マウスにTCDD(0または0.6または3.0μg/Kg)を妊娠12.5日目に経口的に投与した。マウスが成熟したのち、InteliCageにて集団飼育した 。


結果は0.6μg/kgのTCDDを投与されたマウスから生まれたマウスに行動柔軟性の欠如、強迫反復性行動および著明な競合優勢性の低下がみられた。免疫組織染色では内側前頭前野で神経活性化物質Arcの低下がみられ、一方扁桃体において活性化増加がみられた。興味深いことに3.0μg/kgのTCDDを投与されたマウスから生まれたマウスにはこのような異常が見られなかったため、単純にTCDDの用量依存性にこれらの機能が侵されるものではないことが示唆された。


本研究では低用量のTCDDに曝露されたマウスにおける内側前頭前野―扁桃体活性化の不均衡をともなった実行機能、社会的行動障害を証明した。


【Keyword】

内側前頭前野(前前頭皮質)―扁桃体(大脳側頭葉の核である扁桃体の通称):
互いに連結して行動抑制、恐怖に対する調整や消滅、ストレスに対する反応といった様々な認識および感情過程をつかさどる脳野。これらのバランスが崩れると人間において精神障害と関係があるとされている。


塚本 美鈴 2013/02/01

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