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Effect of keishibukuryogan on genetic and dietary obesity models.

Gao F, et al. Evid Based Complement Alternat Med. 2015;2015:801291.

 【要旨】 
 肥満は様々な慢性疾患(例えば糖尿病、高血圧症、心血管疾患、脂肪変性、肝炎、悪性腫瘍など)の重要な危険因子の1つと認識されている。桂枝茯苓丸は血液循環改善作用、抗炎症作用、排泄促進作用などを有する漢方治療薬である。

 遺伝子レベルで肥満を誘発したモデルマウス(SHRマウス)と食事コントロールにより肥満を誘発したモデルマウス(DIOマウス)という異なった肥満モデルを用いて肥満に関連する桂枝茯苓丸の効果を評価した。

 明らかな形での体重や組織の質量の変化は認められなかったが、DIOマウスでは血清レプチンと肝臓のトリグリセリドがコントロールと比べて著しく低下していた。一方でSHRマウスではその効果は認められなかった。さらに、コントロールと比べて桂枝茯苓丸を使用されたDIOマウスにおいては脂肪組織の脂肪細胞が小さく、肝臓での沈着も少なかった。

 肝臓トリグリセリドとコレステロール値の低下とともに、桂枝茯苓丸を使用されているDIOマウスでは肝臓において脂質代謝に関係する遺伝子のmRNAの発現低下が起きていた。

 桂枝茯苓丸がレプチン濃度や脂質代謝を通じて肥満の改善に効果的であると考えられた。


 【アセスメント】
 油症患者さんにおいては動脈硬化や脂質異常症の発症が多く認められる傾向が報告されています。桂枝茯苓丸の血液循環改善作用、抗炎症作用、排泄促進作用と基礎研究で明らかにされているAhR活性を抑制する作用に加えて、脂質代謝への効果がmRNAレベルで捉えられたことにより、油症患者さんにとってよりメリットがあるのではないかと思います。
遺伝子レベルで肥満を誘発したモデルマウス(SHRマウス)と食事コントロールにより肥満を誘発したモデルマウス(DIOマウス)という異なった肥満モデルで検討されたことにより、遺伝子レベルでの異常がなく、後天的な要因で脂質異常症を来している患者さんの脂質代謝を改善する効果があるのではないかと考えられます。


小屋松 淳(長崎 内科担当) 2015/5/26

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