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Kynurenine Modulates MMP-1 and Type-I Collagen Expression via Aryl Hydrocarbon Receptor Activation in Dermal Fibroblasts

Poormasjedi-Meibod, et al. J Cell Physiol, 2016 Mar 17. doi: 10.1002/jcp.25383.

背景
炎症、外傷に引き続く皮膚の創傷治癒機転には真皮線維芽細胞が大きく関わり、遊走、増殖、α-SMAを発現する筋線維芽細胞への分化、膠原線維など細胞外マトリックスの産生、分解により成熟した瘢痕が形成される。しかし、この一連の流れのバランスが崩れると過剰な線維化が生じる。この線維化を抑制する治療薬はない。

筆者らは以前の研究で、芳香族炭化水素受容体(AhR)の内因性リガンドであるキヌレインが皮膚線維芽細胞に作用して筋線維芽細胞への分化、collagen Iの発現が抑制することを明らかにしている。この研究で、キヌレインが長時間、少量に放出される創傷被覆材を用いて創傷治癒を検証した。


要約
キヌレインは真皮線維芽細胞に作用してAhR依存性にcyp1a1、MMP-1の発現を誘導し、collagen Iの発現を抑制した。

次いで、ナノファイバーにキヌレインを塗りこんだものを作成し、真皮線維芽細胞と一緒に培養すると、キヌレインは4-5日かけて培養液に放出され、α-SMA、collagen Iの発現は抑制され、MMP-1が誘導された。

次にラット耳の潰瘍にキヌレインマット(4-5日に一度交換)やキヌレインクリーム塗布(毎日)して対照群と比べたところ、マット、クリーム群ともほぼ同程度に組織への細胞浸潤が減少し、α-SMA陽性筋線維芽細胞が減少し、collagen Iの発現は抑制、MMP-1の発現は増強した。

キヌレイン+ナノファイバーは線維化を起こさない創傷被覆材になり得る可能性が示唆された。

三苫 千景 2016/4/25

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