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Depressive symptoms are associated with oxidative stress in middle-aged women: a cross-sectional study

Hirose A, et al. BioPsychoSocial Medicine (2016) 10:12

 酸化ストレスは悪性腫瘍、動脈硬化、心筋梗塞、気道炎症、加齢性疾患など様々な病気に関わっています。この論文では、身体的および精神的な要素と酸化ストレスとの関連について研究されています。

 40歳から60歳の女性95名に対する横断研究で、閉経の有無、身体組成、循環器系因子、更年期障害に関連した精神的状況などに加えて、酸化ストレスマーカーとして尿中8-hydroxy-2’-deoxyguanosine(8-OHdG)が測定されています。精神的な状況についてはMenopausal Health-Related Quality of Life (MHR-QOL)、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)、Athens Insomnia Scale(AIS)が用いられています(これらはいずれも精神的な状況を反映する症状や気分変動などの有無を点数化して指標化したものです)。

 95名は8-OHdGが低い群(≤25ng/mg creatinine)59名と高い群(≻25ng/mg creatinine)36名に分けられました。8-OHdGが高い群では低い群に比べ、体重、BMI、体脂肪率が低値で、体温が高く、アルコールの消費量も多い傾向が認められ、HADS-depression subscale scoreでは有意に高値(OR:1.23, 95%CI:1.06-1.45, p =0.011)でした。これはその他の因子を調整しても同様であり、中年の女性にとって8-OHdGが高値であることは抑うつの独立した危険因子であることが示唆されました。

 ダイオキシン類は酸化ストレスの原因物質の一つです。油症患者さんは動脈硬化症が多い傾向が報告されており、酸化ストレスによる血管内皮障害などの関与も疑われています。この研究からは、酸化ストレスが身体疾患のみならず精神疾患においても独立した危険因子であることが示されており、油症患者さんの診療の中では抑うつ傾向などにも十分な注意を払う必要があると考えられます。

小屋松 淳 2016/6/26

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