Journal Club

Tapinarof is a natural AhR agonist that resolves skin inflammation in mice and humans.

Smith SH, et al., Journal of Investigative Dermatology; 2017 Jun. doi: 10.1016/j.jid.2017.05.004

背景・目的
 Tapinarof(GSK2894512、WBI-1001)は、昆虫病原性線虫に共生する細菌が産生する天然由来の低分子化合物であり、乾癬やアトピー性皮膚炎(AD)患者の症状を改善する効果があると報告されているが、その作用機序は不明である。本論文では、乾癬・ADなどの炎症症状に対してTapinarofが効能を示す際に標的となる生物学的な分子を同定し、その作用機序を明らかにすることを目的とした。


方法・結果
 Tapinarofの標的となる分子を同定するため、800種以上の細胞内分子(酵素、キナーゼ、核受容体、シグナル伝達分子)と照らし合わせた結果、AhR(Aryl hydrocarbon receptor)、Nrf2(Nuclear factor-erythroid 2-related factor-2)、cannabinoid receptor type 2、monoamine oxidase B pathwayとTapinarofとの間で最も強い相互作用が観察された。またBioMAP Systemを用いた解析により、TapinarofがB細胞などの増殖抑制、組織因子・E-selectin・IL-8・IL-1α・sIgGの誘導、及びeotaxin 3、sTNFα、sIL-10、sIL-6の減少を引き起こすことが示唆された。同システムで他の化合物とTapinarofの生物学的応答に関する類似性を検討したところ、既知のAhRアゴニストであるFICZ(6-formylindolo(3,2-b)carbazole)と最も顕著な関連を認めたことから、AhRをTapinarofの標的の候補としてさらなる解析を行った。

 TapinarofのAhR活性化能を評価するため、ヒト末梢血CD4陽性細胞及びヒト表皮細胞にTapinarofの添加培養を行ってCYP1A1発現を指標に検討したところ、いずれの細胞においてもTapanarofの添加量依存性にCYP1A1発現が増加した。また、HaCaT細胞をTapanirofで処理するとAhRの核内移行が誘導された。さらに、AhR-ARNTと蛍光色素を組み合わせたKinetic binding解析により、Tapinarofが直接AhRに結合してその活性化を引き起こすことが示唆された。

 コールタールによるAhR活性化は表皮細胞の分化を促進することから、Tapinarofでも同様の現象が観察されるかを検討したところ、初代培養のヒト表皮細胞を3日間Tapinarof処理(0.1、1.0 μM)することでCYP1A1が誘導され、後期分化過程に関与する皮膚バリア関連遺伝子FLG、HRNR、IVLの発現が増加した。よって、Tapinarofは表皮細胞分化、皮膚バリア機能にも関与すると推察された。

 イミキモド(IMQ)処理マウス(乾癬のモデル)を用いて皮膚の炎症に対するTapinarofの効果を検証したところ、1% Tapinarofの塗布によって紅斑の減少、表皮肥厚の抑制、組織内サイトカイン(Il17a、Il17f、Il19、Il22、 Il23a、Il1β)の発現減少が誘導された。一方、AhRノックアウトマウスをIMQ処理した場合にはこれらの所見が観察されず、TapinarofがAhR経路を直接活性化することにより、その抗炎症作用を発現していることが確認された。


結論
 天然の低分子化合物TapinarofがAhRのアゴニストであり、AhRに直接結合することでAhR経路を活性化し皮膚の炎症に対して抗炎症作用を示す、という作用機序を明らかにした。


キーワード
Tapinarof, atopic dermatitis (AD), psoriasis, aryl hydrocarbon receptor (AhR), imiquimod (IMQ)



田中 由香 2017/08/21


閉じる