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Adiponectin Upregulates Filaggrin Expression via SIRT1-Mediated Signaling in Human Normal Keratinocytes.

Jin T et. al. Ann Dermatol. 2017 Aug;29(4):407-413. doi: 10.5021/ad.2017.29.4.407.

背景:
フィラグリン(FLG)は皮膚バリア機能にとって非常に重要であるが、FLGの発現がどのように調整されているかは明らかになっていない。

これまでに、SIRT1は転写因子であるPPARα、PPARγ、CCAAT/enhancer binding proteinαなどを介してケラチノサイトの分化を促進すること、フィラグリンやインボクリンなどのケラチノサイトの分化に関連する遺伝子がARNT 1) によって調整されていることが報告されている。

アディポネクチン(Acrp30)はAMP-activated protein kinase (AMPK)を活性化し、その刺激はSIRT1によって増強される。Acrp30は様々な組織や臓器において効果が報告されているが、皮膚やケラチノサイトに関しては報告がない。


要旨:
ヒト正常表皮細胞(normal human epidermal keratinocyte, NHEK)を用いて検証した。その結果、

1. Acrp30で処理することでFLG、SIRT1、ARNTの発現は濃度・時間依存性に増加した。
2. Acrp30で処理した後にsirtinol 2) で処理することでFLG、ARNTの発現増加は抑制された。
3. siRNAでSIRT1をノックダウンするとARNT、FLGの発現は抑制され、Acrp30で刺激してもFLGの発現
 レベルは変わらなかった。
4. siRNAでARNTをノックダウンするとAcrp30で刺激してもFLGは増加しなかった。

以上より、NHEKにおいてAcrp30はSIRT1依存性のシグナル伝達経路を通ってFLGの発現を増強すること、
さらにARNTの発現もまたSIRT1依存性であることがわかった。Acrp30はアトピー性皮膚炎や接触皮膚炎などの皮膚のバリア機能障害に関連する疾患の治療薬としての可能性がある。

1) ARNT: anti-aryl hydrocarbon receptor nuclear translocator
2) Sirtinol : SIRT1特異的阻害剤



永江 航之介 2017/10/12


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