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Ah Receptor Activation Potentiates Neutrophil Chemoattractant (C-X-C Motif) Ligand 5 Expression in Keratinocytes and Skin.

AHR活性はケラチノサイトと皮膚における好中球の走化性因子(C-X-C配列)リガンド5発現を増強する
Smith KJ, et al. Toxicol Sci. 2017 Aug 14. doi: 10.1093/toxsci/kfx160.

背景:
ケモカインは皮膚の微小環境の構成成分であり、免疫細胞の遊走を引き起こしている。元来、炎症性シグナルに含まれる転写因子 (例えばNFκB) はケモカイン発現の重要なメディエーターである。薬物動態とそれらに関連する受容体がケモカインの発現をどの程度調節しているかについてはあまりわかっていない。Aryl hydrocarbon receptor (AHR) はリガンド活性化転写因子であり、薬物代謝、表皮の分化、免疫に関与する遺伝子の調節を通して、皮膚の生理学的な反応をもたらすことが知られている。


要旨:
この研究では、初代マウスケラチノサイトのAHR活性が、好中球を誘導するケモカイン (C-X-Cモチーフ) リガンド5 ( Cxcl 5 ) の発現を調節することを証明した。マウス Cxcl 5 はAHRの標的遺伝子で、AHRのアゴニストであるTCDDやFICZは Cxcl 5 の転写を直接亢進した。TCDD、FICZ、同じくAHRアゴニストであるBNFに加え、マウスケラチノサイトを炎症性サイトカインのインターロイキン1β (IL1β)で処理するとAHR依存性に Cxcl 5 の発現がさらに増強した。なお、皮膚線維芽細胞ではIL1βによる相乗効果はみられなかった。その一方、AHR特異的アンタゴニストは Cxcl 5 の基底値と誘導量を減少した。C57BL/6Jマウスに中波紫外線(UVB)を照射し、さらにFICZを外用処理すると、紫外線照射単独と比較し皮膚の Cxcl 5 発現は有意に増強した。そしてこの反応は Ahr 欠損マウスではみられなかった。以上より、炎症を伴う皮膚においてAHRは Cxcl 5 を強く誘導するメディエーターであることが明らかになった。AHRの制御が炎症性皮膚疾患の治療につながる可能性が示唆された。


<Keywords>
● Cxcl5:マウスのバリア組織上皮細胞(Ⅱ型肺胞細胞、腸細胞、角化細胞)で産生されるCXCケモカイン
● CXCケモカイン: 末端側の2つのシステイン残基の間にその他のアミノ酸が1つ存在するというCXC配列を
 有するケモカイン
● β-naphthoflavone (BNF): AhRアゴニスト活性を有するCYP1A誘導剤



大久保 佑美 2017/10/25


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