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油症とPCB/ダイオキシン/ダイオキシン類似化合物について
 現在のところ、ポリ塩化ビフェニール(PCB)には209種類、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)には135種類、そしてポリ塩化ジベンゾダイオキシン(PCDD)には75種類の化合物が含まれます。米国がベトナム戦争で1962年から使用していた枯葉剤にはPCDDの中でも最も毒性の強い2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD)が含まれていたので、TCDDの毒性については1960年代からよく研究されていました。当時はTCDDをダイオキシンと呼んでいました。
 油症の原因となったカネミ・ライスオイルにも、PCB、PCDFの中の複数の化合物やポリ塩化クアターフェニール(PCQ)が混在していることが、その後油症治療研究班によって明らかにされましたが、油症が発生した当時は、その毒性の性質や強さについてはほとんど分かっていない状況でした。
 その後、PCDDやPCDFが焼却炉などから発生していることが証明され、環境を広く汚染していることが分かってきました。そこで、欧米各国で耐容1日摂取量(TDI)を設定しようという動きが盛んになってきました。1988年には北大西洋条約機構(NATO)によって、1990年には世界保健機構(WHO)によって、急性毒性の指標としてPCDD・PCDF化合物の一部に対してTCDD毒性相当量係数(TCDDの毒性を1としたときの毒性比較係数)を設定し、これらの合計量がダイオキシン毒性相当量(TEQ)といわれるようになりました。すなわちPCDD・PCDF化合物の一部がダイオキシン類と正式に認識されたことになります。
 PCBの一群であるコプラナーPCBにもダイオキシン様の毒性があることも分かってきましたので、1994年、WHOは13種類のPCB化合物にもTCDD毒性相当量係数を設定しました。こうしてPCB化合物の一部もダイオキシン類似化合物として国際的にも認められるようになってきたわけです。
 我が国でも、1996年にPCDD・PCDF化合物の一部がダイオキシン類として、1999年にはPCB化合物の一部もダイオキシン類として認められるようになりました。
 WHOによって設定されたTEQのTDIは1990年に10pg/kg/dayでしたが、1998年には1〜4pg /kg/dayに改正され、我が国でも1999年に4pg /kg/dayとなりました。
 さて油症の患者さんの体内に吸収されたこれらのPCB/ダイオキシン類/ダイオキシン類似化合物は、腸管、皮膚、母乳、たんなどを通してゆっくりと排泄されるため、体内濃度は低下してきています。体内のダイオキシン類/ダイオキシン類似化合物は微量であるため、精度よく測定することが困難でしたが、研究班の努力により比較的少ない採血量で測定することが可能となりました。PCB/ダイオキシン類/ダイオキシン類似化合物が長期にわたり人間の健康にどのような影響を及ぼすのか等については、まだ未解明の部分が数多く残されています。患者さんの健康を本当に理解するためには、患者さんの健康状態の把握、血液検査、PCB/ダイオキシン類/ダイオキシン類似化合物の測定などの検診が非常に重要となります。
   
   
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