タクロリムス軟膏 | 医師の視点で考えるアトピー性皮膚炎 | アトピー性皮膚炎ってどんな病気?

タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏®

タクロリムス軟膏の特性

タクロリムス軟膏の成分であるタクロリムスは、アレルギーの免疫反応を抑える抗炎症作用により、皮膚炎の赤みやかゆみを抑えます。タクロリムスはステロイドホルモンではないため、ホルモン作用による副作用はみられません。特にステロイド外用薬による副作用が出やすい皮膚の薄い顔や首などにも使用しやすい薬です。使用を開始して3~4日間は塗った部位にヒリヒリとほてりや、弱いかゆみを感じますが、そのまま塗り続けると、ほとんどの方はそのような症状はなくなります。患者さんの中には、まれにヒリヒリ感が強く使用したくないという方もいます。タクロリムス軟膏は中等度以下の発疹に非常に有効ですが、顔では塗ったところにニキビができやすくなり、この点はステロイド外用薬と同じです。
タクロリムス軟膏のもう一つの特性は、ステロイドよりも大きな構造(分子量が大きい)をしているため、バリア機能の回復した健康な皮膚表面からは、ほとんど体内に吸収されない事です。従がって全身性の副作用をおこすことは、あまりありません。

タクロリムス軟膏の副作用

薬の説明書には、高濃度のタクロリムスを全身に投与させた実験動物の結果から、皮膚やリンパの癌の発生の危険が書いてあります。しかしタクロリムスをこれまで使用したたくさんの患者さんのデータでは、皮膚がんやリンパ腫が増加したという報告はありません。実際のところ、タクロリムス軟膏には体重10kgあたり1回1g以内、1日2回までという保険診療上の使用量制限があります。成人の場合(体重50kgと考える)には、1回5g、1日2回(すなわち1日10g以内)を使用することができます。この使用量以内であれば、タクロリムスが皮膚から吸収されて血中に検出されることはきわめてまれです。そのため皮膚がんやリンパ腫の発生が増加しないのだと思われます。使用量を守って使うことが大切です。
なお、日光照射に関する注意点として、強い日光を浴びる海水浴やスキー、遠足などに出かける朝はタクロリムス軟膏を塗らないようにします。通学や通勤、また、買い物や洗濯物を干すなどといった通常の生活での日光照射は全く問題ありません。現在、2歳未満の乳幼児への使用は許可されていませんが、これはこの年齢の乳幼児に対して臨床試験を行っていないためです。

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