アトピー性皮膚炎 九州大学医学部皮膚科学教室TOPへ
合併症
アトピー性皮膚炎とウィルス感染症 アトピー性皮膚炎と細菌感染症 アトピー性皮膚炎と白内障
深川修司1)、安元慎一郎2)、絹川直子3)、野瀬善明4)、古江増隆1)
1)九州大学大学院医学研究院皮膚科、2)久留米大学医学部皮膚科、3)九州大学病院医療情報部、4)九州大学大学院医学研究院医療情報部
アトピー性皮膚炎とウィルス感染症
はじめに 研究目的 方法 結果 考察 参考文献
イラスト:合併症:アトピー性皮膚炎とウィルス感染症
はじめに
アトピー性皮膚炎には種々の病原微生物による皮膚感染症が合併しやすいことは以前からよく知られている。ウイルス性疾患としては単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)による皮膚感染症がアトピー性皮膚炎、ダリエ病などの疾患を背景に全身症状を伴って重症化し、広範に小水疱が波及する状態となることがあり、カポジ水痘様発疹症あるいは疱疹性湿疹と呼ばれる。アトピー性皮膚炎における本症の発症の背景として皮膚炎あるいは乾燥状態の存在による表皮バリア機能の不全や全身および局所の免疫不全状態の存在が考えられており、カポジ水痘様発疹症(疱疹性湿疹)患者について様々な臨床的、基礎的異常をとらえたとする研究結果が報告されているものの、それらの異常が本症発症の結果であるのか原因であるのかについては確定しておらず、その詳細はいまだ明らかではない。さらにアトピー性皮膚炎患者に単純ヘルペスウイルスが感染すると全てがカポジ水痘様発疹症(疱疹性湿疹)を発症するとは限らず、一般の臨床型であるごく軽症の口唇ヘルペスに終始する症例もみられるが、この点の背景についても明確には説明されていない。最近Wollenbergら1)は100例のアトピー性皮膚炎に合併した疱疹性湿疹のレトロスペクティブな解析からアトピー性皮膚炎が重症でその発症年齢が早い症例に発症しやすいこと、初感染で発症することもあれば、再発によることもあること、多く(75%)は発症前ステロイド外用剤を使用していなかったことよりステロイド外用が誘発するものではないと考えられることなどを報告しており、これらの結果は以前の本邦における報告2)とも多くの点で一致している。
伝染性軟属腫はポックスウイルス群に属する伝染性軟属腫ウイルス(molluscum contagiosum virus:MCV)による皮膚感染症であり、小児期によくみられる軟らかいイボである。いわゆる性行為感染症として性的に活発な年齢層の外陰部などにも発症をみる場合がある。小野ら3)によれば、全国で年間約100万人が本症により医療機関を訪れると推計され、実際に受診した本症患者の約9割が9歳以下の小児であり、季節としては夏期とくに6-7月に多い。アトピー性皮膚炎などの皮膚の乾燥傾向あるいは湿疹病変に合併しやすく、また、プール利用者に多い。伝染性軟属腫がアトピー性皮膚炎患者に合併しやすい背景についてはカポジ水痘様発疹症(疱疹性湿疹)と同様に皮膚炎あるいは乾燥状態の存在による表皮バリア機能の不全や全身および局所の免疫不全状態の存在が想定されているが、MCVが現在でも培養不可能であることもあって十分な検討がなされているとは言い難い。
ここではアトピー性皮膚炎患者に合併しやすいことが明らかな上記2疾患について、その治療に関するEvidenceを集積し、適切な治療法の選択につながることを期待して取り組むことにした。
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