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タクロリムス外用療法
研究分担者 佐伯秀久 東京慈恵会医科大学皮膚科講師
要旨 はじめに 目的 方法 結果 考察 結論 参考文献
タクロリムス外用療法評価表一覧
評価表の見方
評価法の見方
考察
タクロリムス外用薬は発売以来10年が過ぎ、全世界的にAD患者に使用されるようになった。現在までに得られた臨床知見から、ADにおける短期および長期の有効性は十分に証明されており、さらに本剤を既存のステロイド外用薬と比較した場合、0.1%タクロリムスはミディアム・クラスのステロイドやピメクロリムスより効果が高く、ストロング・クラスのステロイドとほぼ同等の効果を示すことが実証されている。0.03%タクロリムスの強さに関しては論文が少ないが、ウィーク・クラスのステロイドより効果が高く、ピメクロリムスとほぼ同等の効果を示すとの報告がみられている。他方、タクロリムス外用薬の安全性に関しては、有害事象として一過性の灼熱感がほぼ全ての研究結果により示されているものの、3年以上の長期投与試験の結果からも重篤な全身性有害事象はなく、安全性に大きな問題はないものと考えられる。さらに、皮膚癌やリンパ腫の発生リスクの問題に関しても、タクロリムス軟膏外用を行っても自然発生率を超えるものではないとの報告がみられるようになってきた。また、タクロリムスの使用法に関しては、寛解導入療法のみならず、寛解維持療法としての使い方が欧米のガイドラインで提唱されているが、寛解導入後、週に2〜3回のタクロリムス外用を続けることで、症状の再燃を有意に抑えられるとの報告が最近みられている。
これらタクロリムス外用薬の有効性および安全性に関する検討の多くは無作為、多施設二重盲検試験を行っており、質の高い臨床試験の結果に基づいたものといえる。今後はステロイド外用薬や保湿剤との組み合せなどにより、安全性を確保しながら、タクロリムス外用薬の有効性を最大限に引き出す治療法などに関しても検討がさらに加えられていくものと期待される。また、4年以上のより長期における安全性についても今後検討が続けられていくものと期待される。
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