アトピー性皮膚炎 九州大学医学部皮膚科学教室TOPへ
食物アレルゲン除去食療法
研究分担者 濱崎雄平 佐賀大学医学部小児科教授
研究協力者 山本修一 佐賀大学医学部小児科講師
研究協力者 市丸智浩 佐賀県立病院好生館小児科部長
要旨 はじめに 研究目的 方法 結果 考察 結後 参考文献
食物アレルゲン除去食療法評価表一覧
評価表の見方
評価法の見方
結果
(医学中央雑誌Web)
前頁検索式によって医学中央雑誌Web上で検索された論文数は以下のとおりである。
#1: 6,519, #2: 9,209, #3: 119, #4: 41, #5: 2.
#3により検索された119件はすべて症例検討または対照のない臨床研究であり、今回のエビデンスの評価の対象とはならないと考えられた。#4または#5についてもエビデンスの評価対象となるものはなかった。

(PubMed)
前頁検索式によりPubMedにおいて検索された論文数は以下のとおりである。
#1: 4,286, #2: 16,765, #3: 116, #4: 473, #5: 51.
#3および#5から抽出された論文は、その内容から以下のように分類し検討することが妥当であると考えられた。

1) 既存のアトピー性皮膚炎に対する食事療法
#3により検索された116件中、タイトル、要旨から適当と思われる19件を抽出した。このうちわけは、systematic review 3件、 meta analysis 2件、対照のない臨床研究1件、非RCT 4件、RCT 9件でありこれを評価の対象とした。これら9件はさらに、①アレルゲン除去の効果を検討したもの(3件)、②probioticsなどの微生物製剤の効果を検討したもの(6件)に大別された。

① Vitaら1)およびNiggermannら2)の報告は、診断の確定したミルクアレルギー児の皮膚症状に対するミルク除去、およびその代替食品の有効性を検討したものである。Vitaらはミルクアレルギー児の皮膚症状に対するヤギ乳とロバ乳の効果を比較し、ロバ乳が有意に皮膚症状を改善したと報告した。Niggermannらはミルクアレルギー児におけるアミノ酸乳と加水分解乳の効果を比較し、両者に皮膚症状の改善効果および身体成長面での差がないことを報告した。Leungら3)の報告はミルクアレルギーの診断のない小児に対するミルク除去、アミノ酸乳の効果を検討したもので、皮膚症状、尿中eosiophil protein Xに有意差を認めなかった。

② Vijanenら4)はAD症状を持つ診断の確定したミルクアレルギー児に対し、ミルク除去および加水分解乳を与えたうえでprobioticsの効果を検討したが、各群間に有意差を認めなかった。Matsumotoら5)、Sistekら6)の報告では、probitoticsの投与群に皮膚症状の改善傾向が高いものの、有意差は認めなかった。これに対しWestonら7)はADの乳児に対するprobioticsの効果を検討し、probiotics群ではSCORADが有意に低下したと報告した。Passeronら8)はAD児の皮膚症状に対するprebioticsとsynbioticsの効果を比較したが、有意差を認めなかった。Kochら9)は、成人ADに対するDocosahexaenoic acid (DHA)の効果について検討した。DHA群では対照群にくらべ皮疹が有意に改善したと報告した。

2) アトピー性皮膚炎発症予防を目的とした食事療法
#5により検索された51件中、同様に12件が抽出され、このうち11件がRCTでありこれを評価の対象とした。これら11件はさらに、①アレルゲン除去の効果を検討したもの(4件)、②probioticsなどの微生物製剤の効果を検討したもの(7件)に大別された。

① Arshadら10)はアレルギー疾患発症ハイリスク児において生下時より12ヶ月間、乳製品、鶏卵、小麦、ナッツ、魚類、大豆を厳しく除去した場合、その後8年間、除去群ではAD発症が対照群に比べ50%低いことを報告した。von Bergら11, 12, 13)はアレルギー疾患発症ハイリスク児に対し、生下時よりミルク、鶏卵、大豆、魚類、ナッツ、トマト、柑橘類を厳しく制限した上で、普通ミルク、部分加水分解乳(pHF-W)、高度加水分解乳(eHF-W)、高度加水分解カゼイン乳(eHF-C)におけるADを含むアレルギー疾患発症について検討した。12か月時のADを含むアレルギー疾患発症は、eHF-C群において有意に低下した11)。さらに3歳時12)、8歳時13)の検討では、pHF-W群とeHF-C群において、有意にAD発症が抑制されたと報告した。

② アレルギー疾患発症ハイリスクの新生児に対するprobitotics、prebioticsのAD発症予防効果を検討したものが7件見られた14, 15, 16, 17, 18, 19, 20)。probioticsを検討した5件では、Laitinennら14)が予防効果ありと報告したものの、他の3件17, 18, 19)では効果なし、1件20)では菌種により効果を認めたと報告した。prebioticsを検討した2件では、Kitzら15)が効果あり、Arsanogluら16)が効果なしと相反する結果を報告している。

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