アトピー性皮膚炎 九州大学医学部皮膚科学教室TOPへ
心身医学療法
研究協力者 羽白 誠 はしろクリニック院長
はじめに 方法 検索結果 研究方法 内容 結論 参考文献
心身医学療法評価表一覧
評価表の見方
評価法の見方
内容
メタ分析 2件(英語 2件、日本語 なし):心理教育:保留、心理療法:ある程度有効
1.
Cochrane Database Syst Rev 2007 Jul 18; CD004054. Ersser SJ et al.(2)
[検索]小児ADの心理療法、心理教育に関するもの。多数のデータベースから。
[検索結果]5つのRCTが報告されていた。
[内容]4つは両親に対する介入で、残りの1つは患児に対するリラクゼーションであった。両親への介入のうち3つの報告で介入群の皮膚の重症度が改善していた。
[結論]研究デザインが異なるためにデータの結合ができない。有用であるとまでは結論付けをしていない。
2.
Int Arch Allergy Immunol 2007; 144: 1-9. Chida Y et al(3).
[検索]1986-2006年の間でADの心理介入に関するもの。
[検索結果]8件の報告あり。
[内容]アロマテラピー、自律訓練法、短期力動精神療法、認知行動療法、皮膚科的教育および認知行動療法、ハビットリバーサル、ストレスマネージメント、構造化教育(重複あり)。8件のうち5件(自律訓練法、認知行動療法、皮膚科的教育と認知行動療法、ハビットリバーサル、構造化教育)では皮膚症状の有意な改善がみられたが、残りの3件(アロマテラピー、短期力動精神療法、ストレスマネージメント)では有意差はみられなかった。かゆみについては4件(自律訓練法、認知行動療法、皮膚科的教育および認知行動療法、ストレスマネージメント)で有意に減少していたが、1件(ハビットリバーサル)では有意差がなかった。掻破については記載の4件(自律訓練法、認知行動療法、皮膚科的教育と認知行動療法、ハビットリバーサル)すべてで改善していた。心理状態は3件(ハビットリバーサル、ストレスマネージメント、構造化教育)で社会不安、QOL、コーピングスキル、いらだち、破滅感、かゆみのコーピングにおいて改善していた。
[結論]心理的介入は有用であるが、どの心理療法が有用かはさらなるデータが必要である。

注:メタ分析で小児ADの心身医学療法において5件のRCTの報告ありと書かれているが、
PubmedではRCTは0件である。本論文は多数のデータベースを用いて検索しており、他のデータベースによるものである。


比較研究 4件(英語 1件、日本語 3件):すべて有効
英語:認知行動療法 1件
日本語:SSRI 2件、セロトニンアゴニスト1件、認知行動療法1件
1.
Acta Derm Venereol 2009; 89 57-63. Evers AW et al(4).
[治療法]認知行動療法
[対象]施行群61名と対照群30名
[方法]痒みに対する対処行動トレーニングプログラムを施行。3ヶ月、12ヶ月の時点で評価。
[結果]痒み、掻破行動、痒みに対する対処行動、皮膚症状のいずれも施行群で有意に改善していた。
2.
西日本皮膚科 2007; 69: 177-181.永井彩子 ほか(5)。
[治療法]SSRI(抗うつ薬)
[対象]成人AD患者26名。投与群14名と非投与群12名。
[方法]パロキセチン塩酸塩を8週間投与し皮膚症状と精神状態を評価。
[結果]皮膚症状、精神状態ともに両群で改善したが、投与群でより改善していた。
3.
日皮会誌 2004; 114: 959-966. 橋爪秀夫 ほか(6)。
[治療法]セロトニンアゴニスト(抗不安薬)
[対象]成人AD軽症群、中等症群、重症群
[方法]タンドスピロンクエン酸塩を投与。投与群26名、非投与群32名。
[結果]抗不安薬を投与することは重症群で皮疹の改善により寄与していた。
4.
心身医学 2003; 43: 589-597. 石田有希 ほか(7)。
[治療法]認知行動療法
[対象]成人AD48名。実施群19名、非実施群29名。
[方法]セルフモニタリングを実施群に施行。
[結果]実施群で皮膚症状に改善傾向がみられたが、掻破行動では変化の差はみられなかった。


単群研究 7件(英語 4件、日本語 3件):すべて有効
英語:ホメオパシー、SSRI、集団精神療法、音楽療法 各1件
日本語:集団精神療法2件、心理教育1件
1.
Acta Derm Venereol 2009; 89: 45-51. Staender S et al(8).
[治療法]SSRI(抗うつ薬)
[対象]そう痒性皮膚疾患72名
[方法]パロキセチン塩酸塩またはフルボキサミンマレイン酸塩を投与。
[結果]68%で痒みが改善した。
2.
Complement Ther Med. 2007; 12: 115-120. Itamura R(9).
[治療法]ホメオパシー
[対象]AD25名、他の湿疹20名、重症のざ瘡6名、慢性蕁麻疹6名、尋常性乾癬2名、汎発性脱毛症1名。
[方法]皮膚科治療にホメオパシーを追加。
[結果]症状が50%以上改善したものが全体で88.3%。
3.
Psychother Psychosom 2004; 73: 293-301. Stangier U et al(10).
[治療法]集団精神療法
[対象]成人AD
[方法]集団精神療法を3ヶ月施行。開始1年後まで評価。
[結果]開始前に掻破が強く、血清IgEが低く、健康観の内省が少ない、痒みに関する気づきの多い人でより改善していた。
4.
Behav Med 2003; 29: 15-19. Kimata H et al(11).
[治療法]音楽療法
[対象]ラテックスアレルギーを持つアトピー性皮膚炎患者。
[方法]クラシック音楽を聴かせて、ラテックスによる即時型アレルギー反応検査を施行
[結果]モーツァルトを聴かせた群は膨疹の形成が抑制されたが、ベートーベンを聴かせた群は抑制されなかった。
5.
日心療内科会誌 2007; 11: 11-16. 山北高志 ほか(12)。
[治療法]心理教育
[対象]成人AD15名。
[方法]入院による心理教育。
[結果]重症度の有意な改善はみられなかったが、精神的ストレス、身体的ストレス、そう痒感、ステロイド恐怖は有意に改善した。
6.
臨床心理学 2007; 7: 507-517. 和田幸子(13)。
[治療法]集団精神療法
[対象]成人AD15名
[方法]セルフヘルプグループへの参加。
[結果]自己受容の契機となり、仲間意識ができ、孤独からの開放が得られ、他者理解を深めて自信を回復した。
7.
臨床皮膚科 2003; 57: 1150-1154. 檜垣祐子 ほか(14)。
[治療法]集団精神療法
[対象]成人AD36名。
[方法]グループで講義と患者同士のフリートーク。
[結果]他の患者の問題解決に対して積極的になり、皮膚症状、掻破行動、ストレス対処行動が改善した。


症例報告 7件(英語 2件、日本語 5件):すべて有効
英語:認知行動療法 1件、NDRI 1件
日本語:SSRI、催眠療法、森田療法、心理療法、絶食療法、アロマテラピー
1.
Psychol Health Med 2007; 12: 445-449. Wittkowski A et al(15).
[治療法]認知行動療法
[対象]AD2名。
[方法]認知行動療法
[結果]不安、抑うつ、悲観的な考えおよびQOLが改善した。
2.
Pharmacopsychiatry 2006; 39: 229. Gonzalez E et al(16).
[治療法]NDRI(ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬)(抗うつ薬)
[対象]50歳の重症難治性のAD1名。
[方法]抗うつ薬の一種であるBupropionを投与。
[結果]皮膚症状が改善した。
3.
J Environm Dermatol Cut Allergol 2008; 2: 95-106. 渡辺千恵子 ほか(17)。
[方法]SSRI(抗うつ薬)、セロトニンアゴニスト
[対象]成人AD12名。
[方法]パロキセチン塩酸塩7名、タンドスピロンクエン酸塩5名に3ヶ月間投与。
[結果]前者の薬剤で5名が、後者の薬剤で2名が皮膚症状およびかゆみに関して改善した。
4.
臨床催眠学 2006; 7: 69-75. 川嶋新二(18)。
[方法]催眠療法。
[対象]成人AD1名。
[方法]自己催眠。
[結果]自己催眠体験についての気づき、催眠暗示の気づき、自己効力感の高まり、ADに対する認知の変化や自己のパーソナリティの気づきがあり有用であった。
5.
心身医学 2006; 46: 819-825. 千々岩武陽 ほか(19)。
[治療法]絶食療法
[対象]寛解と増悪を繰り返すAD。
[方法]絶食療法
[結果]自己の内省が促され、身体症状、検査所見ともに改善した。
6.
日本森田療法会誌 2005; 16: 139-145. 板村論子 ほか(20)。
[方法]森田療法
[対象]アトピー性皮膚炎を含めた難治性湿疹2名。
[方法]外来森田療法
[結果]1例は心身相関と悪循環に気づき改善した。もう1例は心理的葛藤を生じてありのままの生き方に変わって改善した。
7.
心身医学 2004; 44: 41-49. 相原道子 ほか(21)。
[方法]アロマテラピー
[対象]成人AD4名。
[方法]睡眠時に鎮静系香料を4週間暴露。
[結果]気分変動の心理検査で1名が改善、睡眠は2名が改善、好酸球数は3名が低下、血清IgEは2名で低下した。
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