経過 | 医師の視点で考えるアトピー性皮膚炎 | アトピー性皮膚炎ってどんな病気?

アトピー性皮膚炎の経過

アトピー性皮膚炎の体質は遺伝子で決まっていますが、私たちの体には病気を抑える力が備わっています。病気の体質があっても病気を抑える力がしっかりしているうちは、病気は表面化しません。逆に体調が悪いと病気が徐々に表面化してきます。この微妙なバランスによって、アトピー性皮膚炎の経過はかなりの個人差がみられます。
乳児期に発症して1歳6カ月までにほとんど治ってしまう人もいれば、なかなか治らないまま思春期・成人期まで続いてしまう人、いったん治っても思春期・成人期になってから再発し重症化する人、5歳以降に発症したり、思春期・成人期から発症する人もいます(図13)。

図13 アトピー性皮膚炎の経過図

《アトピー性皮膚炎では皮膚バリア機能が低下しています》

アトピー性皮膚炎の肌は皮膚を守る力(皮膚バリア機能)が弱いため、乾燥肌(ドライスキン)になります。乾燥した皮膚は外界の刺激に対してバリア機能が低下し抵抗力が弱いため、細菌感染やウイルス感染を起こしやすくなります。図14のように、正常皮膚では皮膚のバリア機能がしっかりと働いていますので、体外から体内に侵入しようとする化学物質や微生物をブロックしてくれます。また水分が体外に放出されるのも防いでくれています。しかし乾燥しバリア機能が低下したアトピー性皮膚炎の皮膚では、体外からの刺激物質が容易に侵入しやすいですし、また体内の水分も出ていきやすくなっています。

図14 皮膚のバリア機能

細菌感染では黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌の感染、ウイルス感染ではヘルペスウイルスや水いぼウイルスの感染がよくみられます。ヘルペスウイルス感染の典型では、口の周りなどの皮膚に2~5mm程度の小さな水疱があらわれます。健康な人はほとんどが軽症ですみますが、アトピー性皮膚炎の患者さんでは皮膚バリア機能が弱いため、水疱が顔中に広がったり、体の広い範囲に拡大して重症になることがあり、その症状はカポジ水痘様発疹症〈すいとうようほっしんしょう〉と呼ばれています(図15図16)。

図15,16 ヘルペスウイルス感染症

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