アトピー性皮膚炎ってどんな病気? おわりに|アトピー性皮膚炎についていっしょに考えましょう。|九州大学

おわりに

〜アトピー性皮膚炎の良好なコントロールのために〜

アトピー性皮膚炎の効果的な治療法として、保湿薬を全身にしっかり塗る、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏をフィンガーチップユニットに従って十分量しかも皮膚炎予備軍の部位にも広めに塗る、かゆみに対しては抗ヒスタミン薬を内服するといった方法を説明をしてきました。これらは導入治療とよばれるもので、症状を効果的にできるだけ短期間でコントロールしようという治療です。その後、塗る部位を広めにしたまま外用量を減らしていくプロアクティブ治療に移行します。これは良い状態をできるだけ長く維持しようとする寛解維持治療です。

「炎症をだしつくせばよくなる」という考え方をときに耳にしますが、これは誤った考え方です。皮膚炎という大きな炎症は体に悪影響を及ぼし、皮膚細胞の寿命や活性を低下させます。炎症はできるだけすみやかに抑えることが大切です。炎症が長引いた皮膚ではよく色素沈着がみられますが、これは皮膚細胞が炎症のために壊れた証拠です。導入治療は、炎症という大きな火を効果的に手早く抑え、皮膚細胞のダメージを少なくするものです。寛解維持治療は、その火が再度燃え上がらないようにコントロールすることを目的としています。1年ほどコントロールできると、火が燃え上がる頻度も力も格段に低下し、さらにしっかりコントロールできるようになるでしょう。

たとえば成人の全身の皮膚炎で、1日20gのステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を2週間ほど毎日外用する導入治療では、確かにたくさんの外用薬を使用します。しかし炎症が抑えられると、週3回、週2回、週1回と、外用回数は減っていきます。1回の外用量も10g、7.5g、5gと減少していきます。ほとんどの患者さんが、1年後には1週間に1~2回の外用で非常に良好にコントロールできるようになります。そうなると、赤みやかゆみの部位のみに、ときどきステロイド外用薬やタクロリムス軟膏を使用するという状態になります。このような導入治療・寛解維持治療では、副作用はほとんど起こりませんので安心してください。ただし、良好なコントロールが得られていても、保湿薬の外用はできるだけ欠かさずに毎日継続することが大切です。保湿薬は皮膚の乾燥・老化を防ぐ作用があるため、アトピー性皮膚炎でダメージを受けた皮膚細胞をできるだけ若々しく保ってくれます。

研究代表者 九州大学皮膚科

古江 増隆

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