アトピー性皮膚炎 九州大学医学部皮膚科学教室TOPへ
スキンケア
研究分担者 秀 道広 広島大学大学院医歯薬総合研究科
研究協力者 信藤 肇 広島大学大学院医歯薬総合研究科
研究要旨 はじめに 研究目的 研究方法 研究結果 考察 結論 参考文献
スキンケア評価表一覧
評価表の見方
評価法の見方
考察
前回のスキンケアのEBMでは、種々の保湿外用薬の中でも尿素、グリセリン、乳酸アンモニウム、セラミド、へパリン類似物質、ヒノキチオールなどの保湿成分を含む外用薬の有用性が確認された。今回の検討でも新たに精製ツバキ油17)、合成セラミド18)、海水濃縮ミネラル19),20),21)などの成分を含む新たな保湿外用薬の有効性が報告され、その他にもジアミド誘導体配合入浴剤22)、シャワー時に使用する5%Dead sea salt 23)、12% ammonium lactate および 20% urea 24)を含む液状石鹸など、保湿外用薬以外のスキンケア製品のADに対する有効性が報告されていた。
保湿外用薬間の比較では、ヘパリン類似物質、尿素製剤、ワセリンの検討があり27)、軽微なAD患者ではヘパリン類似物質がほかの2つの外用剤より高い角層水分量の改善効果を示した。
本来スキンケアに用いられる保湿外用薬は急性期のADの症状を治療するものではなく、軽症例における症状改善や、治療により鎮静化した皮膚炎の増悪を防ぐために使用されることが多い。そのため、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏により皮膚炎が改善したのち、保湿外用薬を外用することでどの程度寛解状態が維持できるかは重要な命題である。Szczepanowska 25)らの報告では、ステロイド外用に加え保湿外用薬を併用した群と、ステロイド外用のみで保湿外用薬を併用しなかった群では、ステロイド中止2週間後ですでに臨床症状スコア及び乾燥症状の有意な差が生じていた。また寛解期の保湿外用薬の有用性を再発率で検討した報告もあった。ステロイド外用薬治療後、6週間へパリン類似物質を併用した群と併用しなかった群の寛解維持率はそれぞれ87.5%、60.6%であり27)、へパリン類似物質による有意な再発抑制効果が認められた。このほか尿素含有保湿外用薬を使用した検討では、観察期間26週で保湿外用薬併用群の寛解維持率は68%、保湿外用薬を併用しなかった群の寛解維持率は32%であった26)。以上の結果より、ADの治療ではステロイド外用薬で症状が軽快したのちすぐに外用薬の使用を中止せず、保湿外用薬の外用を継続することで皮膚炎の再発を抑制できることが示された。
さらに急性期の治療期間中でも、ステロイド外用薬に保湿外用薬を併用することで、ステロイド外用薬の量を大きく減ぜられる可能性が示された28) , 29 )。なおこれらの検討は小児を対象として行われたが、アトピー性皮膚炎診療ガイドラインでは「乳幼児、小児では原則として皮疹の重症度が重症あるいは中等症では成人で使用しているステロイドのランクより1ランク低いステロイド外用薬を使用する」とあり、小児ADにおけるステロイド外用薬の副作用への注意を喚起している。そのため、保湿外用薬の併用が小児ADにおけるステロイド外用薬の使用量を減少させられるエビデンスが示されたことの意義は大きいと考えられる。
ADの治療では、適切な保湿外用薬の使用のほか、シャワー浴などにより汗や埃を除去し、皮膚を清潔に保つことの重要性は広く認識されていたが、近年、学校でのシャワー浴の効果について、初めて2つのエビデンスが報告された。とくに、汗をかきやすい時期に重症のAD患児がシャワー浴を行った結果31)は、専門医により評価されており、意義が高いと考えられる。
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