アトピー性皮膚炎 九州大学医学部皮膚科学教室TOPへ
環境アレルゲン
秋山一男、川口博史
*国立病院機構相模原病院臨床研究センター
要旨 はじめに 研究目的 研究方法 研究結果 考察 参考文献
環境アレルゲン評価表一覧
評価表の見方
評価法の見方
研究結果
"atopic dermatitis"と"mite"では1967〜2003年まで462件、"atopic dermatitis"と"mold"では1960〜2002年まで13件、"atopic dermatitis"と"pet"では1969〜2003年まで42件、"atopic dermatitis"と"allergen avoidance"では1984〜2003年まで29件がそれぞれヒットした。これら全546文献の内、アレルゲン除去療法に関連する文献は、"mite"関連では11件、"mold"、"pet"関連では0件、"allergen avoidance"では"mite"と重複した文献が3件認められた。また、アレルゲン関連治療との関係でダニによる減感作療法の文献が2件(1985年、1992年)認められた。これらの文献の内、case reportや症例数の少ない文献を除いた8件についてevidenceの質を検討した。
アレルゲン除去療法の文献7件の内訳は、RCTが5件1,2,3,5,6)、非RCTが2件4,7)で、全報告とも同時対照、前向き試験であった。対象症例総数は、文献2を除けば、20例〜86例と薬物療法に関する試験に比べてこの種の試験の多数例での実施の困難さが伺われた。文献2は、アレルギー疾患を有する妊婦とその出生児を対象とした大規模試験である。試験期間はクリーンルームの効果を検討した文献7の3〜4週間から文献2の2年以上にわたる試験まであるが、環境整備によるアレルゲン除去療法としては、6ヶ月が2報5,6)、12ヶ月が3報1,3,4)であった。主要評価項目(primary outcome)は臨床皮膚スコア、SCORAD index、等の重症度による臨床評価であり、副次的評価項目(secondary outcome)として環境中のダニ抗原量測定及び抗ダニIgE抗体価を用いていた。検索し得た7論文のエビデンスの質は1が3論文1,2,3)、2が4論文4,5,6,7)であり、特に最近の論文は質の高い研究が多くみられた。最終的に環境アレルゲン除去療法の効果については、有効が5論文、無効が2論文で、特にエビデンスの質が1の論文は2/3が無効と結論しており、長期的視点での検討を含め今後のさらなる検討が必要と思われる。減感作療法については、1985年の著効を示した1例報告以外は、評価可能な論文は1992年の1論文のみであり、その後はみられない。本論文ではヤケヒョウヒダニ抗原による8ヶ月間の減感作療法ではplaceboと差がなく、さらなる6ヶ月の治療でplacebo群に比較して治療群で臨床症状の一部が有意に優っていた。しかしながら著者らは、検討可能な症例数が少なく確信ある結論を導き出すことはできないと述べている。
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