アトピー性皮膚炎 九州大学医学部皮膚科学教室TOPへ
シクロスポリン内服療法
研究協力者 藤本 学 金沢大学大学院医学系研究科皮膚科学
要旨 はじめに 研究目的 研究方法 結果 考察 結論 参考文献
シクロスポリン内服療法評価表一覧
評価表の見方
評価法の見方
結果
メタ解析
Schmittらは、2005年8月までに発表された論文の中から、ヒトについての,invitroでなく、臨床的なエンドポイントが示されている、5例以上のオリジナルな結果の報告という基準に該当した論文15報についてのメタ解析を行った21)。うち8報はRCTであり、7報が非RCTのオープン試験であった。すべての試験で平均重症度の改善が認められ、6-8週の治療後に約50%の低下が認められた。プラセボとの比較RCTでは、すべての報告でシクロスポリンの優位性が認められた。2週後の評価ではシクロスポリンの高用量群の方が低用量群より速やかな改善が得られた。一方、安全性に関するデータを患者・月単位で換算したところ、30%以上のクレアチニン上昇は10.9%、新規の高血圧は5.8%、感染症は12.4%に認められた。小児と成人では有効性は同等であったが、小児の方が忍容性に優れていた。長期の有効性と安全性についてはまだデータが十分ではないと結論づけている。

長期内服の検討
Hijnenらは、シクロスポリン内服の長期内服の有用性と安全性について、2.5-5mg/kgを6ヶ月以上内服している15歳以上のアトピー性皮膚炎患者73例を対象に後ろ向きに検討した22)。シクロスポリン内服は56例で有効であったが、30%以上のクレアチニン上昇が7例、高血圧が11例にみられた。中止後40例が再燃、うち6例ではリバウンド現象がみられた。

シクロスポリン内服とタクロリムス外用の比較
Pacorらは、計30例を対象にシクロスポリン内服(3mg/kg/日)をタクロリムス外用と比較する二重盲検無作為試験を行った23)。一群はシクロスポリン内服とプラセボの外用、他群はタクロリムス1日2回外用とプラセボ内服を行った。有効性と安全性は両群で同等であったが、タクロリムス外用の方が速効性があった。

国内からの報告
重症成人型アトピー性皮膚炎患者を対象としたシクロスポリンMEPCの前期第II相試験の多施設共同、ランダム化、オープンラベル、並行群間比較試験の報告24)では、有効性と安全性ならびに初期有効投与量設定を目的に、106例を対象に、1日2回内服、4週間投与として、1, 3, 5 mg/kg/日の用量を割り付けた。重症度スコアと罹病範囲スコアの最終変化率、皮疹と掻痒の最終改善率は高用量群ほど改善率が高かったが、5 mg/kg/日群は有害事象と腎機能に関する臨床検査値の異常変動発現率が高かったことから、3 mg/kg/日が開始用量として望ましいと結論された。
成人の重症アトピー性皮膚炎患者を対象としたシクロスポリンMEPCとプラセボとの多施設共同、ランダム化、二重盲検並行群間試験の報告25)では、実薬44例、プラセボ45例を対象に、平均投与量3 mg/kg/日で8週間投与した。重症度スコアと罹病範囲スコアはプラセボ群に比べて実薬群は有意に改善し、有害事象の発現率は同等であり、有用性が証明された。
成人の重症アトピー性皮膚炎患者に対するシクロスポリンMEPC間歇投与法の安全性および有効評価の多施設共同、オープン、長期観察試験26)では、56例を対象に、3mg/kg/日を開始用量とし、2-5mg/kg/日の範囲で8週間の治療期と2週間以上の休薬期を52週後まで繰り返した。重症度および罹患範囲のスコアは50%以上および40%以上の低下を示し、有効性が認められた。有害事象は全例に、副作用は76.8%に出現したが、問題となる有害事象はなかったことから、長期間コントロールに適した薬剤と結論された。

トップページへ戻る 上へ戻る
九州大学医学部皮膚科学教室TOPへ