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ステロイド外用療法
大矢幸弘1)、野村伊知郎1)、須田友子1)、成田雅美1)、渡辺博子1)、赤司賢一2)、明石真幸1)、二村昌樹1)、松本美江子1)、小嶋なみ子1)、赤澤晃3)
1)国立成育医療センター第一専門診療部アレルギー科、2)東京慈恵会医科大学小児科、3)国立成育医療センター総合診療部小児期診療科
クエスチョン
Q1: ステロイドを塗ると皮膚が黒くなったり厚くなったりすると聞きましたが本当ですか?
Q2: ステロイド外用薬を毎日塗り続けても大丈夫でしょうか?
Q3: ステロイドを長く使っていると体の中に蓄積して怖いことが起きると聞きましたが本当ですか?
Q4: どのような塗り方をすれば副作用を回避できるのでしょうか?
Q5: ステロイド外用薬には強いものと弱いものがあるとききましたが?
Q6: ステロイド外用薬の副作用が怖いので、保湿薬などで薄めて使いたいのに、チューブのまま出す先生がいますが大丈夫でしょうか?
Q7: ステロイドを塗る量を教えてください。
Q8: アトピー性皮膚炎の子どもの皮膚にステロイドを塗ると数日できれいになる場所と10円玉くらいのしつこい湿疹でちっとも消えない場所があるのですが、どう塗ったらよいのですか?
Q9: ステロイド外用薬を塗ればアトピー性皮膚炎は治るのでしょうか?
アンサー
ステロイド外用療法
Q1: ステロイドを塗ると皮膚が黒くなったり厚くなったりすると聞きましたが本当ですか?

イラスト:ステロイド外用療法

A1: ステロイド外用薬は皮膚の血管を収縮させるので、塗るとお肌は白くなりますし、長く塗り続けると薄くなってきます。皮膚が黒くなったり厚くなったりするのはステロイドの副作用ではなく、アトピー性皮膚炎の治療が長年中途半端であったり全く治療しなかった場合に見られる現象です。
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ステロイド外用療法
Q2: ステロイド外用薬を毎日塗り続けても大丈夫でしょうか?
A2: ステロイド外用薬は毛細血管を収縮させるので最初はお肌が白くなるのですが、何ヵ月も連続して塗り続けていると皮膚が薄くなったり、本来毛深くない塗布部位が毛深くなったり、毛細血管がもろくなり拡張してくることがあります。止めればこうした副作用はなくなることが多いのですが、毛細血管の拡張の改善には1年以上を要することもあります。思春期には薄くなった皮膚に、皮膚線条といって妊娠線のような模様が生ずることがあり、これは数年経っても消えないことが多いです。また、稀ではありますが、かぶれ(接触性皮膚炎)を起こす方もいます。ですから漫然と自己流で毎日ステロイド外用薬を塗り続けることは好ましくありません。
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ステロイド外用療法
Q3: ステロイドを長く使っていると体の中に蓄積して怖いことが起きると聞きましたが本当ですか?
A3: ステロイドは蓄積して副作用が起こるのではありません。私たちの体は副腎でステロイドを作っています(副腎皮質ホルモンとも呼ばれます)。そのために、外から余分に与えると自分の体が作るのをさぼり始めるから問題が起こるのです。長い間ステロイドを飲んでいると副腎が萎縮して自分の体はステロイドを作らなくなります。そこで急にステロイドを飲むのを止めると、体中のステロイドが足りなくなって大変なことになります。すなわち、急に症状が悪化し体のあちこちに不調が起きます。ステロイド外用薬(塗り薬)は内服薬(飲み薬)と違って、このような副作用がでることは稀ですが、ステロイド外用薬でも炎症を抑える力の強いものを長期間使用していた場合は似たようなことが起こることもあり得ます。ですから、自己判断で急にやめるのはとても危険なことです。
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ステロイド外用療法
Q4: どのような塗り方をすれば副作用を回避できるのでしょうか?
A4: まず、その人の皮膚状態に合わせた適切な強さのステロイド外用薬を数日から数週間くらい(場所と皮疹の程度による)連続して塗ってきれいな皮膚を回復させ、それから週に何日かは保湿薬だけにしてステロイド外用薬を塗る日を少しづつ減らしていくようにします。顔以外の部位では強いステロイド外用薬でも週2-3日程度なら半年から1年くらい使用しても副作用が生じないことが報告されています。顔などのように皮膚の薄い場所がなかなか保湿薬に移行できない場合には一旦プロトピック軟膏(タクロリムス外用薬の章をご覧ください)などに切り替えることでステロイド外用薬の副作用を避ける方法もあります。いずれにしても、個人差がありますし、ステロイド外用薬の強さも様々ですので一概には言えません。自己流で塗るのではなく、信頼できる医師に相談しながら使うことが大切です。
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ステロイド外用療法
Q5: ステロイド外用薬には強いものと弱いものがあるとききましたが?
A5: 日本ではステロイド外用薬の強さを5段階に分けています(国や人によって若干の違いがあります)。1群が最も強く、5群が最も弱い段階に分類されています。強いものから順に、1群:最も強い(ストロンゲスト)、2群:非常に強い(ベリーストロング)、3群:強い(ストロング)、4群:中程度(ミディアム)、5群:弱い(ウィーク)、とランク付けされていることが多いようです。アトピー性皮膚炎の治療によく使われるのは2群から4群の外用薬で種類もたくさんあります。体の部位によって100倍以上の吸収率の差がありますし、それぞれのランクで随分効き目が違いますので適切な使い分けをすることが必要です。
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ステロイド外用療法
Q6: ステロイド外用薬の副作用が怖いので、保湿薬などで薄めて使いたいのに、チューブのまま出す先生がいますが大丈夫でしょうか?
A6: ステロイド外用薬を保湿薬やワセリンなどで薄めてもより弱いランクのステロイド外用薬と同じにはなりませんし、必ずしも副作用が減るわけではありません。保湿薬と組み合わせると逆にステロイドの皮膚への吸収率が上がる場合もあります。また組み合わせによっては薬の成分に変化が起きることもあるので勝手に混ぜたり薄めたりすることは好ましくありません。もちろん意図的に配合することはありますが、本来はそのまま使えるようにできておりますので保湿薬で薄めてないからといって心配なさる必要はありません。
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ステロイド外用療法
Q7: ステロイドを塗る量を教えてください。
A7: 5gの軟膏チューブ1本で、大人の手の平の面積のだいたい20倍を塗ることができます。これぐらいですと軟膏をすり込むことなく、皮膚に均一に薄く延ばして塗ることができます。ただし、すり込むように塗っていた多くの方にとっては、たっぷり塗る感じがすることが多いようです。例えば顔全体に塗るときには手のひら2つ分くらいになりますので、0.5gくらいが目安です。大人の人差し指の先から1つ目の関節の線までくらいを取り出すと約0.4-0.5gくらいになります。また、体全体では乳児だと5gくらい、学童ですと10gから15gくらいが必要になります。アトピー性皮膚炎は軽症の方が多いので、実際にはその何分の1程度しか必要にはなりませんが、全身にステロイドを塗らなくてはならない重症の方は1回に必要な軟膏の量は随分多いものです。ステロイドを塗って皮膚がつるつるになると、ざらざらぼこぼこしていたときより表面積が減るのでより少ない量で済むようになります。また、逆に分厚く塗っても効き目がよくなるわけではなく、毛嚢炎ができやすくなりますし、衣服に付着し吸収されてしまうので無駄になります。
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ステロイド外用療法
Q8: アトピー性皮膚炎の子どもの皮膚にステロイドを塗ると数日できれいになる場所と10円玉くらいのしつこい湿疹でちっとも消えない場所があるのですが、どう塗ったらよいのですか?
A8: アトピー性皮膚炎のお子様には貨幣状湿疹というしつこい湿疹が合併することが多く、これは数日塗ったくらいでは消えません。2週間くらいは強いステロイドを塗らないと消えないことが多く、きれいになった皮膚が全体的には保湿でコントロールできるようになっても、その部分だけは触って硬い感じがなくなるまで塗り続けることが必要です。ただし、1週間塗っても改善傾向が認められないときは、とびひを合併していたり、ヘルペスやカビによる皮疹ができていることがありますので、早めに受診をしてください。
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ステロイド外用療法
Q9: ステロイド外用薬を塗ればアトピー性皮膚炎は治るのでしょうか?
A9: アトピー性皮膚炎は、多因子性疾患と言って、多くの原因が複合して発症する病気です。特に、文明国やお金持ちに多いので、裕福な人のライフスタイルや環境などに原因があるのではないかと疑われています。ですから、アトピー性皮膚炎を悪化させるたくさんの原因を放置したまま、ステロイド外用薬だけを塗っても治すことはできません。ステロイドを塗って、一旦きれいになっても止めればまた再発してしまいます。ですから将来ステロイドを減らして止めていけるようにするためには、アトピー性皮膚炎を悪化させる環境因子やライフスタイルを変えていくことも考える必要があります。
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