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抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬
溝口昌子、上西香子
*聖マリアンナ医科大学皮膚科
クエスチョン

Q1: アトピー性皮膚炎のために処方されるかゆみ止めの飲み薬はどんなものがありますか。
Q2: アトピー性皮膚炎のかゆみを本当に止めることができるのでしょうか。
Q3: うちの子はこのお薬を飲んでいますが、相変わらずかゆがっています。どうしたらよいでしょうか。
Q4: 副作用はどのようなものがありますか。

アンサー
抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬
Q1: アトピー性皮膚炎のために処方されるかゆみ止めの飲み薬はどんなものがありますか。

イラスト:抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬

A1: アトピー性皮膚炎に処方されるかゆみ止めの内服薬は、抗ヒスタミン薬か抗ヒスタミン作用のある抗アレルギー薬です。後者は第2世代の抗ヒスタミン薬とも言われます。ヒスタミンは肥満細胞から出され、くしゃみや鼻水、かゆみの原因になるものですが、抗ヒスタミン薬はこのヒスタミンの働きを抑えるのです。抗ヒスタミン薬には多数の種類があります。眠気の副作用のあるもの、ないもの、1日1回あるいは2回飲むものとがあり、内服方法は薬によって異なります。ここではまとめて抗ヒスタミン薬と呼ぶことにします。
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抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬
Q2: アトピー性皮膚炎のかゆみを本当に止めることができるのでしょうか。
A2: 結論から申しますと完全ではありませんが、ある程度かゆみに効きます。このことはきちんと実証されています。 アトピー性皮膚炎は皮膚の病気ですので、抗ヒスタミン薬だけでなく外用薬が使われます。通常強力な抗炎症効果のあるステロイド軟膏が一緒に使われますので、患者さんは外用薬が効いたと感じても、併用している抗ヒスタミン薬の効果を実感できないことが多いのです。でも、患者さんの中には抗ヒスタミン薬を中止するとかゆくなると言われる方もかなりいます。
臨床試験という言葉をご存知の方もあるかと思いますが、患者さんに使っていただいて効果や副作用を調べるものです。これは多施設で多数の患者さんを対象に、プラセボ(偽薬:有効成分を含まず治療効果のない薬)を対照とした二重盲検法(処方した医師も患者さんも実薬である抗ヒスタミン薬を内服しているのか、対照であるプラセボを内服しているのか知らない状態で効果と副作用を判定する)を行うのが最高の臨床試験と言われています。抗ヒスタミン薬の多くは慢性じんましんに対してきちんとした臨床試験を行い有効性が実証されています。
ところが、アトピー性皮膚炎に対して行われた臨床試験は二重盲検法でなかったり、二重盲検法でも症例数が少なかったりで、少々難ありの臨床試験であったのです。そのためもあり、有効性に疑問を持つ人もいたのです。 ところが、アトピー性皮膚炎の掻痒に対する抗ヒスタミン薬(塩酸フェキソフェナジン)の多施設、大規模、二重盲検法による臨床試験が行われ、有効性が実証され、2003年に報告されました。かゆみの程度を点数で表して比較したら、プラセボより、かゆみが改善していることが、統計学に基づく比較において十分な差で示されたのです。
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抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬
Q3: うちの子はこのお薬を飲んでいますが、相変わらずかゆがっています。どうしたらよいでしょうか。
A3: 残念ながら抗ヒスタミン薬内服により完全にかゆみが抑制される訳ではありません。但し、内服しないより内服した方がかゆみをある程度抑えられることは先程申しましたように最も信頼できる方法で実証されています。
かゆみを完全に抑えるにはかゆみを生じる原因である皮膚病そのものを治すのが最も確実ですので、ステロイド軟膏などの外用薬で皮疹を治療することがまず大切です。私は患者さんに抗ヒスタミン薬の内服をすすめる時、「完全ではありませんが、ある程度かゆみを抑えることができる薬です。アトピー性皮膚炎は掻いて悪化することが多いので、これを少しでも抑えてくれる薬は治療上必要です。症状が改善するまで外用薬だけでなく、内服薬を併用することが大切です。」と話しております。
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抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬
Q4: 副作用はどのようなものがありますか。
A4: 主な副作用は眠気やだるさです。風邪薬にも抗ヒスタミン薬が含まれていることが多く、既に経験されている方もおられるでしょう。この副作用は内服を続けていると消失する傾向がありますが、車の運転などは避ける必要があります。但し最近はこの副作用がほとんどない抗ヒスタミン薬もあります。またかゆくて夜眠れない人には眠気を生じた方が望ましいこともありますので、本薬を内服する時は担当医とよく相談して、多数の種類の中から適当なものを選んで貰ってください。よく、こんなに長い間お薬を飲んで大丈夫ですかと聞かれることがありますが、血中に長く留まらない抗ヒスタミン薬のような薬の副作用は、多くの場合1ヵ月ぐらいで現れますので、長く飲んでいる薬はむしろ安全と言えます。
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