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環境アレルゲン
秋山一男、川口博史
*国立病院機構相模原病院臨床研究センター
クエスチョン

Q1: アトピー性皮膚炎のアレルゲン検査について教えてください。
Q2: アレルゲン検査が陽性の場合には必ずアレルギーを引き起こしますか?
Q3: アトピー性皮膚炎を引き起こしやすいアレルゲンはあるのですか?
Q4: 民間療法やマスコミで勧められているものは効果がありますか?

アンサー
環境アレルゲン
Q1: アトピー性皮膚炎のアレルゲン検査について教えてください。

イラスト:環境アレルゲン

A1: 通常は血液の中のIgE抗体というものを測定します。 食物や環境中のアレルギーを起こさせやすい物質をアレルゲンといいます。アレルゲンは皮膚や粘膜(口、鼻、気管支、消化管)を通して体の中に吸収されます。吸収されたアレルゲンは人体の中でIgE抗体という反応たんぱくを産生させますが、アレルギー疾患のある人ではこのIgE抗体が健常人よりも多く産生されてしまいます。IgE抗体を産生しやすい体質のことをアトピー体質と呼びます。ですから血液中のIgE抗体を測定することによって、どのアレルゲンに反応しやすいかを知ることができます。
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Q2: アレルゲン検査が陽性の場合には必ずアレルギーを引き起こしますか?
A2: アレルゲンに対するIgE抗体が陽性というだけで、アレルギー疾患とは診断しません。 食物アレルギーを引き起こしやすい食物として卵、牛乳、小麦、大豆などが知られています。花粉症ではスギ花粉が最も有名です。喘息やアトピー性皮膚炎ではヒョウヒダニに対するIgE抗体が最も検出されます。でもよく考えてみますと、卵、牛乳、小麦、大豆、スギ花粉、ヒョウヒダニ、どれをとっても我々が日常最も頻繁に食べたり、また環境中に多量に存在する身近な環境物質ばかりです。実は、アレルギー症状のない健常人の血液中にもこれらのアレルゲンに対するIgE抗体がしばしば検出されます。このようにIgE抗体は身の回りで最も接する頻度の高いアレルゲンに対してたくさん作られますし、IgE抗体が陽性だからといってアレルギー疾患だとすぐに診断することはしません。あくまでもそのアレルゲンを食べたり、触ったり、吸入したりして症状がでるかどうかが最も大切な診断の根拠となります。
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Q3: アトピー性皮膚炎を引き起こしやすいアレルゲンはあるのですか?
A3: アレルゲンが直接的に症状を引き起こしやすいアレルギー疾患(食物アレルギー・花粉症・じんましん・アナフィラキシーなど)と、そうではないアレルギー疾患(成人喘息・アトピー性皮膚炎など)があります。
一般的に皮膚に炎症があるとIgE抗体が産生されやすくなります。そのためアトピー性皮膚炎では、他のアレルギー疾患に比べIgE抗体が高くなる傾向があります。IgE抗体が高くなれば、当然いろいろなアレルゲンに対するIgE抗体が検出されるようになります。とりわけ住宅環境の中で最も多いヒョウヒダニアレルゲンに対するIgE抗体が高くなるのが一般的です。でもIgE抗体が陽性だから必ずヒョウヒダニアレルゲンによって症状が悪化するわけではありません。そのアレルゲンによって症状がでるかどうかが最も大切な診断の根拠となります。
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Q4: 民間療法やマスコミで勧められているものは効果がありますか?
A4: 症状がよくなることはありますが、「治る」ことはありません。 よく「○○がアトピーに効いた!」、「△△でアトピーが治った!」という広告を目にしますね。しかし、それは間違いです。アトピー性皮膚炎の症状がよくなることはあるかも知れませんが、アトピー性皮膚炎が治る、特に「完全に治る」ことはありません。また、ある人には効果があっても、必ずしも自分にも効くとは限らないのです。
民間療法の種類には主に(1)体質改善、(2)乾燥肌の改善、(3)皮膚の殺菌・浄化、(4)炎症を抑える効果に分けられます。(1)については、体質は遺伝に関わることなので、簡単に改善することはできません。(2)は、例えば乾燥肌用の保湿薬の効果をうたっているものであれば、かぶれなど悪い影響がなければ、使用しても問題はありません。         
しかし多くのものは(4)の効果も同時にうたっており、ステロイド外用薬の代わりに使うことを宣伝していたりします。ステロイド外用薬を使わず、これだけで治そうとすると、かえって症状がひどくなるのです。また(3)についてですが、健康なヒトの皮膚には常に菌はついています。けっして菌をゼロにする必要はありません。普通に入浴をして、低刺激性のせっけんで強くこすらずに洗えばよいのです。
民間療法のすべてが悪い、効かないというわけではありません。肌の保湿に関しては、効果があり、患者さんの使用感もよく、症状に悪影響を与えるものでなければ、通常の治療法に加えることも可能です。その際には、必ず医師と相談してください。
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