アトピー性皮膚炎 九州大学医学部皮膚科学教室TOPへ
ステロイド外用療法 タクロリムス外用療法 抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬 スキンケア 食物アレルゲン除去食療法
環境アレルゲン 紫外線療法 シクロスポリン内服療法 漢方療法 民間療法 合併症
スキンケア
秀道広1)、高路修2)、望月満3)、田中稔彦1)
1)広島大学大学院医歯薬学総合研究科創生医科学専攻探索医科学講座、2)県立広島病院皮膚科、3)国立病院機構呉医療センター皮膚科
クエスチョン

Q1: アトピー性皮膚炎の患者にはどうして保湿薬を塗る必要があるのですか?
Q2: 保湿薬にはどのような種類があり、それぞれにどのように異なるのですか?
Q3: 保湿薬はどのように塗ったらよいのでしょうか?
Q4: お医者さんにはステロイドの塗り薬と保湿薬を両方もらっています。使い分け方を教えてください。

アンサー
スキンケア
Q1: アトピー性皮膚炎の患者にはどうして保湿薬を塗る必要があるのですか?

イラスト:スキンケア

A1: ヒトの皮膚は表皮、真皮、皮下組織という層構造で成り立っています。表皮の一番表面には角質層という厚いたんぱく質の層があり、また、角質層の細胞同士の間には角質細胞間脂質という成分が満たされており、それによって体外から細菌やウイルス、あるいは有害な化学物質が侵入するのを防いだり、皮膚の水分が喪失して乾燥することを防いでいます。そのような皮膚の機能をバリア機能といいます。アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚では様々な外的刺激によって炎症が起きやすいばかりでなく、皮膚のバリア機能が障害されており、皮膚は乾燥しやすく、また様々なアレルギーの原因物質(アレルゲン)や病原体が侵入しやすい状態となっています。そのような皮膚機能異常を補正するためにスキンケアが必要となります。アトピー性皮膚炎の治療においてスキンケアとは、皮膚表面を清潔に保つこと、乾燥を防ぎ保湿すること、そして室内環境を清潔に保つことなどを意味します。特に保湿薬を塗ることが毎日の生活の中で患者さんが怠ることなく努力すべき最も重要な治療の1つです。
上へ戻る
スキンケア
Q2: 保湿薬にはどのような種類があり、それぞれにどのように異なるのですか?
A2: 皮膚の乾燥状態を改善させ、ダメージを受けた皮膚のバリア機能を改善させる目的の外用薬には様々な種類のものがあります。白色ワセリンや亜鉛華軟膏などの油脂性の軟膏は、それを皮膚表面に塗ることで水分が皮膚表面から蒸発することを防ぎ、角質層の水分を保つ働きが期待できます。それらは安価で安全性も高く、広く治療に用いられてきました。しかし皮膚に塗るとベタついた感じになりやすく、特に夏場には使いづらく感じやすいのが難点です。   
尿素が配合された軟膏としてはウレパール®、パスタロン®、ケラチナミンコーワ軟膏®などの医薬品があり、この他にも多くの商品が市販されています。尿素軟膏は世界中で使用されており、アトピー性皮膚炎に対する治療効果については保湿薬の中でも最も詳しく検討されています。それらの報告によると尿素軟膏は明らかに皮膚の乾燥や軽い炎症症状を改善させる効果があり、皮膚のバリア機能を改善させたという結果がいくつか示されています。しかし乾燥の強い所や赤みのある部分に塗ると刺激感を生じることがあるのが難点です。   
皮膚の一番表面にある角質層は、角質細胞間脂質と呼ばれる油分に囲まれてバリアを形成しています。セラミドはその主成分で、セラミドを化学的に合成して軟膏化したものが市販されています。セラミド配合軟膏は尿素と同等、あるいはそれ以上の保湿効果を有し、乾燥などの症状を改善させる効果があります。しかし医療機関から処方される薬ではなく、直接薬局で購入する必要があり、多くのものはやや高価です。   
この他わが国では、ヘパリン類似物質と呼ばれる保湿薬(ヒルドイド®)の使用が可能で、尿素軟膏やセラミド配合軟膏と同様の効果が証明されています。この薬を使うためには医師の処方が必要です。
上へ戻る
スキンケア
Q3: 保湿薬はどのように塗ったらよいのでしょうか?
A3: アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚は赤みやブツブツがなく、一見正常に見える部分でも多くはドライスキンの状態にあります。赤みやブツブツのある部分はステロイドなどの炎症を抑える薬を塗る必要がありますが、それ以外の部分にはできるだけ広い部分に保湿薬を塗ることが必要です。特に冬の乾燥しやすい時期にはしっかりと保湿薬を塗って乾燥を防ぐことが必要です。広い範囲に塗るためには保湿薬を少し多めに手の指の腹に取って、何ヵ所かにつけ、さらに手のひら全体を使って皮膚表面にまんべんなく塗りのばします。皮膚のしわはおおむね体軸に対して横方向に走っています。できるだけしわに沿って薬を塗りのばしてください。背中など自分で塗りにくい部分には誰かに手伝ってもらいましょう。
上へ戻る
スキンケア
Q4: お医者さんにはステロイドの塗り薬と保湿薬を両方もらっています。使い分け方を教えてください。
A4: アトピー性皮膚炎の患者さんは様々な環境因子によって容易に皮膚炎を生じ、赤くただれたりブツブツとした膨らみが生じます。そのような皮疹の悪化している時期には保湿薬だけでは症状を改善させることは困難で、ステロイドやタクロリムス軟膏など炎症を抑える薬をしっかり塗ることが必要です。一定期間炎症を抑える治療を続けて症状が落ち着いた後には、保湿外用薬に切り替えるか、ステロイドの塗り薬を作用の軽いものに変更しても、よい皮膚の状態を維持することができます。保湿薬は長い期間、広い範囲に塗りましょう。ステロイドは皮疹の悪化している部分を中心に適切な強さのものを塗りましょう。ステロイドの種類と塗る場所は症状に応じて変更する必要がありますので、お医者さんに指示してもらいましょう。
上へ戻る

 

トップページへ戻る 上へ戻る
九州大学医学部皮膚科学教室TOPへ