アトピー性皮膚炎 九州大学医学部皮膚科学教室TOPへ
抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬
溝口昌子、上西香子
*聖マリアンナ医科大学皮膚科
要旨 はじめに 研究目的 方法 結果 考察 参考文献
抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬評価表一覧
評価表の見方
評価法の見方
考察
今までのアトピー性皮膚炎に対する抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬の有効性に関するランダム化比較試験の文献をまとめた。有用性を示す文献も少なからず見られたが、塩酸フェキソフェナジンの効果に関する1報告22)と塩酸セチリジンの安全性に関する1報告16)を除き、エビデンスのレベル1に属する報告はなかった。実際、ランダム化と記載があっても具体的なランダム化の方法の記載がない報告や、二重盲検法となっていても、盲検化の方法の記載がない報告がほとんどで、比較対照がプラセボでない文献や母集団の少ない文献も多かった。一般に抗ヒスタミン作用のある抗アレルギー薬は開発の段階で蕁麻疹に対する効果がレベルの高い二重盲検法で確認されているが、アトピー性皮膚炎に対しての効果を開発時に同様に確認した薬剤は少なく、対象疾患の拡大のための治験報告がほとんどである。市販後もなかなか大規模なランダム化比較試験ができないのが実情であろう。
今回の結果からは、塩酸ヒドロキシジン、塩酸フェキソフェナジン、ロラタジンは、一定の効果が得られていると考えられた。また、塩酸セチリジンについても、有意差のない報告も見られるものの安全性に関する評価が得られており、有用な薬剤と考えられた。それに対し、クロルフェニラミン、テルフェナジン、塩酸アゼラスチン、ケトチフェン、クレマスチン、アクリバスチン、アステミゾール、オキサトミド、LN2974は、意見が分かれるかレベルの高くない少数(1編)の報告が見られるのみで、有用性の評価を保留したい。
抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬のアトピー性皮膚炎に対しての有用性は、個々の薬剤によって多少異なり、ひとまとめに論じることは難しい。また、今までの報告でも統一された評価法がなく、メタアナリシスが困難である。比較的多くの文献で掻痒に対するvisual analogue scale(VAS)が用いられていたが、このような評価法を含めて評価法に一定の基準ができれば、これらの薬剤の有用性についてまとまった見解をつくる礎になると考えられる。
現段階では、この薬剤群全体に対するエビデンスを示すことは困難であるが、アトピー性皮膚炎の皮膚症状や掻痒に対して、一部の抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬の有用性が示唆されており、今後統一された評価法によりレベルの高い臨床治験が行われれば、この薬剤群全体の有用性のエビデンスあるいは個々の薬剤の有用性の差が示される可能性があると考える。
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